第6章 決戦を越えて
指折り話すペーやんに、アタシは「頑張れ」と伝えニッと笑いかける。
「じゃあな、ユウ」
「うん。また明日集会でね」
クルッと踵を返して歩き出すペーやんに手を振って、アタシはその背中を見送った。
「……ペーやん……」
呟きながら、アタシは手を下ろす。
ペーやんは、裏切り者じゃない……少なくともアタシはそう思ってる。
ペーやんはバカで、不器用で、仲間想いなヤツだから……どんなに怒っていても、大勢引き連れて奇襲なんてセコいマネするようなヤツじゃない。
よりにもよってパーちんの仇である愛美愛主と手を組むなんて、誰よりもパーちんを想ってるペーやんが考えつくハズない……
──“誰か”に、けしかけられでもしない限り。
「…………」
ペーやんの蟠る心を、燻る怒りを……追い詰めて、利用したヤツがいる。
「半間修二……」
アタシは、こちらに向かって薄気味悪く笑う、アイツの顔を思い出した。
「〝芭流覇羅〟……」
半間は自分を芭流覇羅の“副総長”と名乗った……つまり、総長は別にいる。
ペーやんを利用したのは、ソイツか、半間か……もしくは両方か。
「絶ッ対に許さない‼︎」
アタシは拳を握り込みながら、確かな怒りに虚空を睨んだ。
◇◆◇◆
8月6日、東卍の幹部会議と、その後に集会が行われた。
今じゃ〝8・3抗争〟なんて呼ばれ方してる、東卍対愛美愛主の決戦……パーちんの為に始まった愛美愛主との抗争の、決算集会。
総長をノサれ、半間に利用された末切り捨てられた愛美愛主は、実質壊滅したようなもの。
隊員の中には半間について流れたヤツもいるんだろうけど、今のところ愛美愛主の残党に大きな動きは無い。
スッキリしない点はまだあるけど、東卍の勝利には変わらなかった。
マイキーは仲間を労い、みんな素直に戦勝を祝った。
次に、ペーやんの裁決。
マイキーとアタシは元々罰さないつもりだったけど、幹部会議では改めて隊長達と話し合った。
『パーちんを想って暴走しちまったけど、ペーやんは今でも東卍の仲間だ』と、隊長達の話は纏まった。
裏切りに一際怒ってた場地やムーチョは、マイキーが許すならと納得してくれたけど、「ただし一発殴る」とやっぱりまだ怒ってる様子だった。