第6章 決戦を越えて
「寂しかったら、いつでも電話してきていーから、今日はもう帰って」
アタシはその手に力を入れて、マイキーの腕を解かせた。
「……電話、絶対出ろよ」
「ん、わかってる」
「寝てる時でも?」
「ちゃんと出るって約束する」
腕から手を離して、アタシはマイキーの頭を撫でる。
「だから、不安そうな顔してないで、『また明日』って言って笑ってよ」
「………」
マイキーは俯いて、深く息を吐き出した。
「……ん、また明日」
まだ寂しさは拭い切れない顔で、それでもマイキーは笑ってくれた。
「また明日ね。おやすみ」
「電話するからな!ちゃんと出ろよ」
「ハイハイ、わかったわかった」
マイキーは名残惜しそうに、それでも歩き出したら振り返らずに帰路に着く。
アタシは、マイキーの背中を見えなくなるまで見送ってから、自分の家に入った。
「ただいま」
リビングに入って部屋の明かりをつけ、キッチンに行って水を飲む。
「…………」
冷蔵庫に貼ってるカレンダーが、嫌に目についた。
「……明後日は集会……」
8月4日のマスに指を置いて、2マス右に滑らせる。
「……もうすぐ……」
アタシは一人で呟きながら……指を、1マス下に滑らせた。
◇◆◇◆
翌日、8月5日の朝───
ピンポーン
「ん?」
家のインターホンが鳴らされた。
誰だろ……アタシは首を傾げながら、玄関に向かった。
合鍵持ってるマイキーは鳴らさないし、来るとしたらドラケンくらいだけど、今入院中の彼が来られるワケない。
ガチャ
「はーい、どちら様?」
玄関ドアを開けて、外に顔を出す。
門扉の前に立つ相手と、目が合った。
「え──ペーやん⁉︎」
アタシは家から出て、門扉に駆け寄る。
学校でもないのにYシャツとボンタンを着た格好で、ペーやんは両手を後ろに組んで立っていた。
「ペー、どうしたの?なんか用事?」
門扉を開けて、アタシが「上がってく?」と聞くと、ペーやんは首を横に振る。
「用っつうか……ユウ、に」
「ん?」
「オレ…………」
ペーやんは、何かを話し出そうとしたけど、言葉が続かない。