第6章 決戦を越えて
「んじゃ、行ってくる」
「いってらっさい」
アタシはベッドに横になったまま、離れてくマイキーの姿を目で追う。
見えなくなるとまもなく、ドアの開く音と閉じる音が聞こえて、部屋からマイキーの気配が消えた。
やれやれと息をついて、アタシは目を閉じる。
意識が深く沈んでくように、アタシはすぐ眠りに落ちた。
◇◆◇◆
結局、8月4日のほとんどを、アタシは佐野家の中で過ごした。
マイキーやエマ(特にマイキー)に「今日も泊まって」って引き止められたけど、夜にアタシは自分の家に帰った。
昨日は色々ほったらかしのまま家出ちゃったから、片付けないとヤバいんだよね。
「送ってくれてありがとね」
門扉を開けて、アタシはここまで送ってくれたマイキーにお礼を言う。
そのままサッサと家に入ろうとしたけど
ギュッ
「!うっ」
「和月っ」
門扉の中まで追いかけて来たマイキーが、後ろからアタシの体を抱き締めて引き止めた。
もういい加減しつこい‼︎って怒鳴ってやろうかとも思ったけど、マイキーの声が嫌に弱々しくて、それは憚られた。
「はーなーしーてー」
でも帰りたいは帰りたいから、アタシは多少暴れる。
マイキーはアタシを押さえ込むように抱き締めながら、アタシの耳元に口を寄せた。
「……和月はずっと、オレん家に居たらいいだろ」
「あのさ〜、それ言うの何回目よ。“こっち”がアタシの家なんだってば」
「何で一緒に居てくんねーの?」
マイキーの言葉に、アタシはピタッと動きを止める。
「……今日一緒に居たじゃん」
「でも帰るんだろ。オレはずっと一緒に居てえのに」
「子供みたいな事言わないで」
ワガママで、甘えたで、ついでに嫉妬魔なマイキーは、いつもアタシを困らせるけど……今日は特にだ。
エマも似たような感じだった……二人とも、ドラケンの事があって不安なのかもしれないけど……
「…………」
それだけが理由じゃないって、アタシは“知ってる”。
──もうすぐ……―――の――だから。
「……しっかりしてよ、“マイキー”」
「………」
「明後日は幹部会議と集会だし、いつまでも休んでらんないでしょ」