第6章 決戦を越えて
マイキーが、アタシの膝裏と背中に手をやって、ヒョイっとアタシの体を抱き上げた。
急な浮遊感に襲われて、アタシは咄嗟にマイキーの首元に腕を回してしがみ付く。
「な、何急に」
「ん?だってこうでもしねーと、和月大人しく寝ねーんだもん」
マイキーは「暴れんなよ?」と言いながら、アタシを抱えたままベッドの方へと歩いてく。
ボフッとベッドの上にアタシの体を下ろすと、肩を押しつけるように仰向けに寝かせた。
「アタシ、まだ寝るつもりないんだけど」
「寝んの。総長命令」
理不尽な事言いながら、マイキーはゆっくりとアタシの頭を撫でる。
一気に瞼の重みが増して、アタシはくしゃっと顔を顰めた。
「やめて〜寝ちゃう〜起きれなくなる〜」
「起きなくていーんだよ。オマエはゆっくり寝てろ、眠ぃんだろ?」
そりゃあ昨日は決戦があって、心身ともに疲れたし、オマケに夜は夜で大変な目に遭ったし……というか、
「万次郎が寝かせてくれなかったんじゃん」
「!」
アタシが口尖らせながら恨み言を言うと、マイキーはグッと顔を近づけてきた。
「和月」
「ん?」
「今の、すげぇ“キた”。もっかい言って」
「嫌だ」
アタシが真顔で返すと、今度はマイキーが「ケチ」と口を尖らせた。
うとっと、アタシの瞼がまた重くなる。
もう限界、眠い、寝よ……
「……総長命令に従って、寝ることにする」
「ん。それでいい」
よしよしとアタシの頭を撫でながら、マイキーは口元を緩めて笑った。
「あっ、そーだ。オレが戻るまで、勝手に帰んなよ」
「えーやだ。目ぇ覚めたら家帰る」
「ダーメ。戻った時に和月居なかったら許さねーかんな」
「アンタねぇ……」
どこまでも我が儘なマイキーにアタシは文句言ってやりたかったけど、眠気で口が回らない。
マイキーはアタシの頭から手を離すと、チュッと額にキスをした。
「………」
そのまま離れんのかと思えば、唇にもキスされる。
「ちょっと」
「ハハ、我慢できなかった。ねむそーなオマエがかわいーから」
アタシにもう一度キスをしてから、ようやくマイキーは立ち上がった。