第5章 8月3日
「和月」
「ん、なぁに?」
「オレの上座って」
「え゙っ」
体を離したと思ったら、マイキーはグイグイとアタシの腕を引く。
「今あんまくっ付きたくないんだけど…雨とか汗とかでお互いベタついてンだからさ」
アタシがやんわり拒否すると、マイキーはムッとした顔になって「外では我慢してやったろ」と強く腕を引っ張ってきた。
結局アタシが折れて、仕方なくマイキーの膝の上に跨るようにして、腰を落とすハメになる。
エマがお風呂出る気配したら、見られる前に離れなきゃ……と考えながら。
「………」
「?」
またすぐ抱きしめられんのかと思ってたけど、何故かマイキーはこちらをジッと見てくるだけで何もしてこない。
「マイキー?どうし──」
ガシッ
「うあっ⁉︎」
そしたらいきなり、マイキーが両手でアタシの腰を掴んだ。
ゾワッとした感覚が背筋を走り、アタシは割と大きな声を出してしまった。
「ちょっ、何⁉︎」
アタシは声を抑えながら、マイキーの腕を掴む。
離そうと力を入れても、マイキーの手はアタシの腰をガッシリ掴んだまま離れない。
マイキーは手はそのままに、アタシの胸に顔を埋めてきた。
「ねぇ、くすぐったいから放して欲し──」
ガブッ
「痛っ!」
マイキーが、服越しにアタシの左胸に噛み付いた。
「こっ…の!」
グイッ
「⁉︎」
アタシはムカついて、マイキーの後ろ髪を引っ張って顔を離れさせた。
「いっ…てぇ!何すんだよ!」
「いや、こっちのセリフ!何でいきなり噛むの⁉︎」
マイキーは不機嫌そうに頬を膨らませながら、「だってムカついたんだもん」と子供のような文句を言う。
「ムカついたって何が…」
「和月の格好!」
「?」
本当に意味がわからなくて、アタシは首を傾げる。
自分の家にいたところをペーやんに呼び出されて、そのまま出たから……今のアタシの服装は、部屋着にしてるTシャツとショートパンツ。
雨でずぶ濡れにはなったけど、黒地のTシャツだから下着が透けて〜という事もなかったハズ。
マイキーは、不機嫌顔をアタシに近づけながら答えた。