第5章 8月3日
「ケンチンとの面会って、いつから出来る?」
「んー……麻酔が切れて、ケンの意識が戻って、医者からOKが出たら、かな?最初は多分家族しか出来ないと思うけど」
あ、そうだ……ドラケンの家にも連絡しなきゃだ。
「明日、ケンのトコの店長さんに連絡…あ、いや、直接“お店”に行った方がいっか…」
着替えとかも取りに行く必要あるし。
「ならオレが行く」
「……そうだね。お願い」
家族以外にも面会許可が出たら、みんなにも知らせてやらなきゃな。
「……ん⁉︎」
流れる景色を見て、アタシは驚き目を見開いた。
「ちょっと、マイキー⁉︎こっち道違うんだけど」
「ん?家帰るんだろ?」
「アタシは、アタシの家に送ってもらいたかったんだよね」
「いーじゃん。“こっち”泊まれば」
フフンと鼻を鳴らすマイキーは、アタシからは見えないけど、多分したり顔。
やられた…と思った時には遅くて、アタシは佐野家に連行されてしまった。
バブが家に着くと、アタシはやれやれと肩を落としながら地面に足をつける。
ダメ元でマイキーに「歩いて帰る」と言ったら「ダメに決まってんだろ」と真顔で返された。
「知ってる?こういうの誘拐って言うんだよ」
「ただいまー」
「聞けやコラ」
玄関扉を開けて家の中に入ってくマイキーに文句を言いつつ、アタシも中に入り、扉を閉めて鍵をかけた。
奥からエマが出てきて、アタシ達に「おかえり」と言う。
「ただいま」
「ただいま……」
“お邪魔しますって言う”って嫌がらせをちょっと考えたけど、エマの前だから止めておいた。
「先生は……さすがに寝てるか」
「うん」
「というか、エマはまだ浴衣?」
「ウチもさっき帰ったトコだから」
エマから「ハイ」と財布を返され、アタシはそれをポッケに仕舞う。
アタシとマイキーが居間に入ると、エマはお風呂場の方へ向かってった。
「シャワーで済まさず、ちゃんと湯船浸かって温もるんだよ」
「わかってるよー」
アタシも後で入らして貰おうと考えながら、アタシは居間のソファに座った。
台所でお茶を飲んでたマイキーが、アタシの隣に腰を下ろす。
すぐに両腕が伸びてきて、アタシはまたマイキーに抱きしめられた。