第5章 8月3日
エマとヒナちゃん、敦くん達が待合室から病院の外へと歩いて行き、三ツ谷もタケミっちとペーやんに呼びかけて走り出した。
「……」
「ん?」
ペーやんだけが、立ち尽くしたまま動かない。
ペーやんの様子を見たタケミっちが、不思議そうな顔をしてペーやんに近付いた。
「ペーやん君?」
「オレ…は…みんなには、会えねぇ…」
「……ペーやん」
震えた声で話すペーやんに、三ツ谷が振り向いた。
「オマエが、パーちん想ってやっちまったって事は、みんな分かってくれるよ…」
「三ツ谷…」
「でもな!ペーやん。一番パーちんの事考えてたのは、ドラケンだかんな」
三ツ谷は厳しい表情で、ペーやんをじっと見つめる。
「ドラケンはあれから毎日、パーちんの親と一緒に面会行ってんだ。親族しか会えねぇのにさ。差し入れ持って、面会中はずーっと外で一人で待ってさ」
「!」
「そんなドラケンを、オマエはハメたんだ!」
「ドラケン…」
驚愕に呆然とするペーやんに、三ツ谷は背を向け視線を前に戻した。
「ちゃんと謝れよ。ドラケンにも、パーちんにも、みんなにも…」
「……うん…」
「おかえり、ペーやん」
三ツ谷はタケミっちと、再度走り出す。
残されたペーやんは、特攻服の袖でゴシゴシと涙を拭ってた。
「………」
アタシもみんなのトコに行こうと、長椅子から立ち上がって、歩き出す。
「ペー」
「!……ユウ」
色々言いたい事はあったけど、三ツ谷が叱ってくれたから、アタシから付け足す事はあまりない。
アタシはペーやんの正面に立って、彼の目を見つめた。
涙に濡れ、少し赤くなった三白眼……きっと手術中も、ずーっと後悔に襲われてたんだろうと思う。
「──大丈夫だよ」
アタシは、ペーやんへニッと笑いかけた。
「今、後悔できてるなら、泣けてるなら、ペーは大丈夫だよ」
散々拭ったのに、ペーやんの目にまた涙が浮かぶ。
「……落ち着いたら、出てきてね」
そう言い置いて、アタシは踵を返して歩き出した。
◇◆◇◆
アタシが病院の外に出ると丁度、東卍のみんなが歓声を上げてるところだった。
三ツ谷や場地が「静かにしろ」と呼びかけても、中々静かにならない。