第5章 8月3日
「タオル?」
「あ、ありがとうございます」
「どーいたしまして。2人とも風邪ひかないようにね」
エマもヒナちゃんも、雨の中救急車が来るまでタケミっちと共にドラケンのそばに居てくれたらしい。
折角、祭りのために可愛い浴衣着てたのに……巻き込んでしまった事に、申し訳なさが募った。
エマにはついでにハンカチも渡してやって、アタシは今度は敦くん達の方に向かう。
「アンタ達にはコレ」
アタシは代表して敦くんに、絆創膏と消毒液を手渡した。
「!あざっす!」
「こちらこそ、ケンを守ってくれてありがとね」
ドラケンを刺したキヨマサは、混戦から離れたタケミっちを追って、自分の取り巻きと共にドラケンにトドメを刺しに向かったらしい。
タケミっちがキヨマサとタイマンを張って勝ち、残った取り巻き達とは敦くん達が戦った。
救急車が到着するまで、キヨマサ一派からドラケンを守ってくれていたんだ……彼らには、こんなモノじゃ感謝し切れない程の恩がある。
アタシが頭を下げると、彼らは全力で止めてきた……一昨日のタケミっちみたいに。
アタシは最後に、マイキーの方に向かった。
長椅子に座ってるマイキーの前に膝をついて、アタシは自分の膝をポンと叩く。
「マイキー、足出して」
「……オレは、いい」
「ダメ、ちゃんと手当てしなきゃ」
マイキーの左足の甲には、赤く擦れた傷と裂けたような傷がある。
原因は、草履でバブのギアチェンジを何度もやった事……いつも以上にスピード出しまくってた分、元々出来てたアザに重なるような傷が新たに出来てしまってた。
「オマエのが怪我酷ぇだろ」
「マイキーの手当てが終わったら、ちゃんと自分の手当てもするよ」
「………」
無言になったマイキーの顔を、アタシは下から覗き込む。
「ほーら、足」
「……ん」
マイキーは渋々、草履を脱いで左足を上げた。
アタシはその足首を掴んで、マイキーの足を自分の膝に乗せさせて、傷の手当てをしていく。
「こんな足でよく喧嘩なんか出来たね」
「オマエにだけは言われたくねー」
「はは、確かにお互い様だワ」