第5章 8月3日
ニッと笑う八戒に、アタシも気が抜けて笑う。
背伸びして手を伸ばし、アタシが「我慢できて偉いね」と八戒の坊主頭を撫でると、八戒は「ガキ扱いすんなよ!」と顔赤くして抗議した。
ふと視線を感じて、アタシはムーチョの居る方に目を向ける。
視線はムーチョではなく、彼の隣に待機してる三途のものだった。
目が合って、三途が会釈するのに、アタシは軽く手を振り返す。
その横から、ふわふわとした金髪が視界に映り込んできた。
「ユウさん、お疲れ様です」
「ん、千冬もお疲れ様」
壱番隊副隊長・松野 千冬
「今日は愛美愛主相手に凄かったねぇ。背ぇデカいヤツを膝蹴りでぶっ飛ばしたトコ見てたよ」
「あれぐらい、全然大した事ないっス。場地さんと比べれば、オレなんてまだまだっスから」
「おー、さすがは圭介の腹心!これからも頼りにしてるからね」
「ッス。ありがとうございます!」
嬉しそうな顔をしてバッと頭を下げる千冬に、八戒とは違った可愛さを感じて微笑ましく思う。
今日の愛美愛主との決戦は、彼ら副隊長の働きも大きかった……隊長と副隊長が前衛張ってくれるからこそ、隊員達は安心して突っ込んで行けるんだよね。
千冬が場地の方へ行くのを見送って、アタシは腕を上にあげてグッと伸びをした。
「ふぅー……」
深く息を吐き出しながら、空を見上げる。
「……よし、コンビニ行こ」
唐突に呟いたアタシに、場地は「は⁉︎」と間抜けな声を上げていた。
◇◆◇◆
コンビニまでの道中、タケミっちのメールの全文を読み、ドラケンと混戦から離脱した後に起きた事を知った。
裏切り者に怒りを募らせながらも、タケミっちやヒナちゃん、敦くん達に感謝する。
コンビニで買い物を終えた後、アタシは病院に戻り待合室に向かった。
「あ、ユウさん」
「ただいま」
「和月……」
顔を上げたマイキーが、ジト目でアタシを見てくる。
「遅ぇ。どこ行ってたんだよ」
「ごめん、コンビニ行ってた」
アタシは、ビニールから買った物を取り出してバリッと袋を開けた。
バスタオル2枚、それぞれエマとヒナちゃんの肩にかけてやる。