第5章 8月3日
「テメーら騒いでンじゃねえ‼︎」
隊員達がアタシを囲んで一斉にドラケンについて聞いてくるのを、場地が一喝。
そのあまりの迫力に、隊員達は一斉に口を噤んだ。
「圭介が一番うるさい。声抑えて」
「うっ…わ、悪ぃ」
「……ケンは、今緊急手術中」
隊長も、隊員も、手術という言葉に息を呑む。
ギリと歯軋りをして、場地はアタシの目を見つめた。
「マイキーは……」
「………」
──「ケンチンを信じろ。大丈夫だ」
アタシは、マイキーの言葉をみんなに伝える。
「総長(マイキー)が、大丈夫って言ってる。これ以上に心強いことってないでしょ?」
アタシは、みんなを安心させる為に、あえて明るい口調で話した。
すると隊員達の表情が、少しだけ和らぐ。
「みんな、今日はお疲れ様。……ケンの手術が終わるまで、もう少しだけ待機してて」
「「「ハイ!」」」
隊員達はアタシに返事をして、バラバラと元の位置に戻って行った。
アタシは肩の力を抜いて、視界に映ったスマイリーの方を向く。
「スマイリーは、自分も怪我してンのに、ここに居て大丈夫なの?」
「あン?これぐらい屁でもねーよ」
そう話すスマイリーの後ろから、アングリーがその肩にポンと手を置いた。
「兄ちゃん、無理は良くないよ。ちゃんと手当てしないと」
「ドラケンの無事確認した後でなー」
心配するアングリーにヒラヒラと手を振って、スマイリーはいつも通りに笑う。
「悪化しても知らないからね」
「余計な世話だっつーの」
心配してやってンのにこの野郎。
「ユウさーん」
「ん?」
呼ばれて顔を向けると、背の高い男……弍番隊副隊長・柴 八戒がこちらに駆け寄ってきた。
「なぁに、八戒?」
「タカちゃんって、病院の中に居んの?」
「うん。心配なら八戒も中にいれば?」
アタシがそう言うと、八戒は顎に手を当てて「うーん」と首を傾げる。
悩んでる悩んでる……大好きな三ツ谷(タカちゃん)のそばに居たいけど、今はそんな事言ってる場合じゃねえよな〜とか考えてんだろうな。
「……いーや。中にいんのが分かったら安心したし、オレはここで大人しく待機してる」
「そっか」