第5章 8月3日
体から強張ってた力が抜けて、アタシは頭を俯ける。
半間を逃してしまった事に、嫌な予感が募った。
くっそ……
「………」
ギュッ
マイキーが、アタシの腰を抱く力を強める。
アタシはそれに応えるように、マイキーの肩に額をつけた。
でもそれはたった数秒の間だけで、アタシは顔を上げてマイキーの目を見つめる。
「マイキー、ケンのトコに向かおう」
「ああ」
アタシ達は体を離して、バブが停めてある方に向かって歩き出した。
遠くから、ここに近づくパトカーのサイレンの音が聴こえる。
「警察が来るよ‼︎みんな撤収‼︎」
マイキーの後ろをついて歩きながら、アタシは東卍と愛美愛主に呼びかけた。
愛美愛主の隊員達は「ヤベェ!」「サツだ!」「ズラかれ!」と口々に言いながら慌てて撤収していく。
「マイキー、少し待ってて」
アタシは、ポッケから携帯を取り出し、開いた。
数分前にタケミっちから届いてたメールで、あの後ドラケンはヒナちゃんが呼んでくれた救急車で搬送された事を知る。
タケミっちのメールには、その後にも文章が続いてたけど、今は時間がないから後で読もうと、アタシは携帯を閉じた。
顔を上げて、東卍の隊員達の方を向いて、口を開く。
「これから、マイキーとアタシは、ケンが運ばれた病院に向かう」
事情を知ってるヤツにも、乱戦に夢中で知らなかったヤツにも、ドラケンが刺されて病院に運ばれた事を説明した。
「副総長が心配なら、絶対に騒がないって約束できるヤツだけ、病院に来ても良いよ」
真夜中に入院病棟もある病院で騒音たてるワケにはいかないから、ホントは「来るな」って言うべきなんだけど……
他でもないドラケンがとなれば、止めたところできっとみんな来てしまう……だからアタシは、注意する方を選んだ。
「自分の体と相談して、休みたいヤツは無理せず帰ること!……ケンの事は、後で必ず連絡するから」
そう話を切り上げて、アタシはバブの後部に跨った。
既にハンドルを握ってたマイキーが、アタシが乗った事を確認してすぐにバブを発進させる。
「和月、オレに掴まれ」
マイキーに言われてすぐ、アタシは彼の胴に手を回して体を密着させた。