第5章 8月3日
「パーちん捕まったのに、なんもしねぇで終わり⁉︎笑えねーよ‼︎」
ペーやんが、強く握った拳をマイキーに振るう。
「こうするしかねえだろぉ!!?」
ゴッ
「……」
殴られたマイキーは、動こうとしなかった。
「パーちんは、オレの〝全部〟なんだよ!!!?」
ドッ
「東卍がパーちん見捨てんなら、敵になるしかねえだろ!!?」
ゴッ
「こいよマイキー!!!なんで殴り返さねぇんだよ!!?」
無言のまま動かないマイキーに、ペーやんは更に声を荒げる。
「オレなんか一発だろ!!?」
するとマイキーが、ペーやんへ手を伸ばした。
彼の後頭部に手をやって、自身に引き寄せ、お互いの額を合わせる。
「オレを見ろ。笑ってるか?」
さっきまであんなにマイキーを殴っていたペーやんの手が、止まった。
「パーちんが捕まって、笑ってるかよ?……辛ぇよ」
高い背を大きく曲げた体勢で、マイキーと額を合わせたまま、動かない。
「オレとケンチンが争って、東卍がバラバラになるのは悲しいって、タケミっちが言ってた。みんなが争っちまうって……オレはそんな事考えてなかった」
その時
「!」
避け続けるアタシに嫌気が差したのか、半間が初めて拳を振るって来た。
ガッ ド
左側から迫るそれをアタシは、“右手”で受け止めて、体を捻って回し蹴りを繰り出す。
「邪魔しないでよ。マイキーの声が聴こえない」
「面白くねぇなぁ…オレに集中しろや」
「嫌だ」
ちゃんと攻勢に出てくれたら、寧ろさっきまでより楽だと、アタシは半間に向かって笑う。
向き合うマイキーとペーやんを視界の端に見ながら、アタシは半間と戦い続けた。
「気が済むまでオレを殴れ」
「………マイキー」
半間に、マイキーの邪魔はさせない。
「オレは、仲間(オマエ)と争いたくないんだ」
愛美愛主に、ペーやんを連れては行かせない。
「それで、全部チャラにして、戻ってこい。ペーやん」
絶対に──!
◇◆◇◆
倒れたヤツも増えてきたけど、まだまだ混戦は続いてる。
流石にアタシも息が切れてきた頃……
「ドラケン──ドラケン君…‼︎」
タケミっちの声が、聴こえた。
「ドラケン君!!!」
悲鳴のような大声が、聴こえた。