第5章 8月3日
アタシを取り囲む敵達が、一斉に向かってくる。
ド ゴッ
アタシは右手の敵の顔面を殴り、続け様に腹を蹴り飛ばした。
「ガハッ」
臭い液体吐きながらソイツはぶっ飛んでいって、アタシは空いた隙間から敵の包囲の外に出る。
次の瞬間
「ヨイショーッ!!!」
ドッ ガ ガ ゴ!
向こうから飛んできた愛美愛主隊員の体が、ヤツらにぶつかって勢いのまま薙ぎ倒した。
「ありがとー、ムーチョ!」
飛んできた隊員は、ムーチョが狙って投げ飛ばしたヤツだった。
アタシが手を上げてお礼を言うと、ムーチョは「おう」と一言だけ返して、すぐに自分の喧嘩に戻ってく。
アタシもすぐに、次の敵に向かって拳を振るった。
「──ドラケン君!」
「!タケミっち…?」
「ドラケンくーん!」
声が聞こえて周囲を見回すと、アタシは乱戦の中をキョロキョロしながら進んでるタケミっちの姿を見つけた。
(くそっ、結局ダメだった)
こんな時に何やってんの⁉︎
戦うでもなく、逃げるでもなく、何故かドラケンを探して歩き回ってる様子。
(8月3日(今日)この抗争で、きっとドラケン君はキヨマサ君に殺されちまう)
「タケミっち‼︎」
アタシはタケミっちを呼んだけど、彼には届かずまた違う方に進んで行ってしまった。
「ああ、もう!」
いつものアタシなら、勝手やるバカは放っておくけど、長内の事で負い目を感じてるからか、今日のアタシは「タケミっちを逃してやらなきゃ」と考えていた。
敵をぶっ飛ばしながら、タケミっちが消えた方へと進む。
「──!」
突然、背中に悪寒が走った。
バシッ
死角から伸びて来てた手を叩き落として、アタシは数歩跳び退がる。
目の前の敵を、強く睨んだ。
「よォ〜、“お姫サマ”」
「半間……」
「オレと一緒に遊ばねぇか?」
まるでナンパでもするような軽い口調で、半間はアタシを見つめニィッと笑う。
「……いいよ?女に負けて泣きを見る覚悟があんならね」
アタシは半間を挑発し、ヤツに向かって構えを取った。
半間がアタシの前にいるこの状況は、悪くない。
半間(コイツ)はマイキーを狙ってるから……ここに留めておけるのは望むところだった。