第5章 8月3日
「オマエが、裏でネチネチしてるキモ男?」
煽るマイキーに、半間はニコリと笑った。
刹那
「面倒クセェなぁ、マイキーちゃ──」
ド
マイキーが、半間のこめかみ目掛けて蹴りを繰り出した。
「──んっ」
「!」
アタシもドラケンも、目を見開いて驚愕する。
いきなり蹴りつけたマイキーにではなく、マイキーの蹴りを受け止めて見せた半間に。
「マイキーの蹴りを止めた⁉︎」
驚く三ツ谷の声を聞きながら、アタシは違和感に眉根を寄せる。
目を凝らしてマイキーの足元を見れば、左足の甲に真新しい傷があるのを見つけた。
軸足の痛みで、上手く力が乗らなかった?……それでも、マイキーの蹴りを止めた半間はただ者じゃないけど……
「痛ってー…そんなに急ぐなよ、マイキー」
真っ赤に腫れた左手首をプラプラと振りながら、半間は薄く笑った。
「オレの目的は、〝東卍潰し〟。かったりぃから内部抗争っしょ」
半間の後方から、ゾロゾロと新たに愛美愛主の隊員達が現れる。
「でも、結果オーライかな」
数は今の倍以上……
「これで〝無敵のマイキー〟を、この手で──ぶっ殺せるからな‼︎」
半間は先程までとは打って変わった声で、興奮したように目を爛と光らせた。
低い声を狂気で昂らせたような声が、耳に絡みつくようで気味悪い。
(コイツが黒幕なのか…?)
ペーやんがドラケンをヤれなかった時を想定して、この人数を隠してたワケか……
「嫌らしいヤツ」
アタシは一言呟いて、マイキーの背中越しに半間を睨んだ。
それに気付いたのか、半間の興奮に開かれた瞳が、チラッとアタシを見る。
ニィと細められた目に、怖気が立った。
「愛美愛主‼︎総勢100人」
両腕を大きく広げて、半間が声高らかに宣言する。
「東卍5人相手だ。前みたいにヒヨんじゃねぇぞ、テメェら‼︎」
次に後ろを向いて、隊員達の士気を鼓舞するように言い放った。
「オレは、長内みたいに甘くねぇからよぉ」
「「「ウッス!!!」」」
「逃げたら、追い込みかけて歯ぁ全部なくなるまでボコるかんな!!?」
「「「……ッウッス!!!」」」
訂正、鼓舞じゃなくて脅迫だった。