第5章 8月3日
「ペー」
「マイキー…‼︎」
ドラケンや愛美愛主に視線を走らせて、マイキーがペーやんを睨みつける。
「オレやユウを別のトコ呼び出したのは、ケンチン襲う為か」
(そんな策略が…?)
アタシは、マイキーの背中と、その奥のペーやんをじっと見つめた。
「で、オレのせいにして〝東卍〟真っ二つに割っちまおう…と」
「オレはただ、パーちんを‼︎」
「ユウ襲ったのは何の為だ?」
「!……」
ペーやんは、動揺したように口を噤む。
その様子に、マイキーは「やっぱりな」と呟いた。
「これは、オマエのやり方じゃねぇ!」
マイキーが強く声を張った。
「“誰に、そそのかされた”?」
(ペーやんを操ってる黒幕がいるってことか?)
マイキーの言葉に、アタシは少し安心する。
(『全部“アイツ”の策略だったんだ』『“誰か”が東卍の内部抗争を企んでいる』……もしかして、キヨマサ君も?)
マイキーも勘付いてたんだ、ペーやんが誰かに利用されてる事に……
「──へー、意外」
睨み合う二人に、誰かの声が割って入った。
アタシ達は、声の主に目を向ける。
「マイキーってアタマもキレるんだね」
そこに居たのは、愛美愛主の隊員に傘を差させながら、呑気にタバコ吹かしてる一人の男。
ソイツは、抑揚の無い低い声で「だりぃ」と呟いた。
(…なんだ?コイツ)
「アイツ……」
「知ってンのか?」
呟くアタシに、三ツ谷が問いかける。
アタシはソイツを見つめながら、三ツ谷に頷き答えた。
ドラケンより高い身長に、手足の長い痩躯……何より特徴的なのは、左手の甲に「罪」、右手の甲に「罰」と刻まれた刺青(タトゥー)。
「新宿界隈じゃ割と有名なヤツだよ。〝歌舞伎町の死神〟って呼ばれてる……愛美愛主の幹部の一人」
マイキーは知らないから、ソイツを見つめ「…誰?」と聞く。
「オレが誰とかどーでもいいけど」
ソイツは、マイキーの前に立ち、口から紫煙を吐き出した。
「一応、今〝仮〟で愛美愛主仕切ってる、半間だ」
愛美愛主〝仮〟総長・半間 修二