第1章 東卍の参謀
「タケミっちは溝中の2年、で間違いないと思う」
「んじゃ、出ぱーつ!」
「ちょっ」
マイキーが急に発進するもんだから、アタシはビックリして携帯落としそうになってしまった。
なんとか落とさずに済むと、片手でリアキャリアを掴みながらバランス取りつつ携帯をポッケに仕舞う。
「オレに掴まればいーのに」
「嫌だ」
猛スピード出したバイクの上じゃないんだから、こんな暑い時期に引っ付いてられるかっての。
◇◆◇◆
大溝中学校に到着。
自転車は校門脇にテキトーに留めて、アタシ達は堂々と溝中校舎の中に入った。
不良とはいえ流石に土足は気が引けるから、来賓用のスリッパを拝借する。
「2年の教室ってどこ?」
「4階建ての校舎だし、多分3階かな?」
階段を見つけて、3階まで上る。
廊下に出ると、2年の教室が並んでたから、アタシ達は1組、2組と順に教室の中を覗いてタケミっちを探してく。
するとその途中で、後ろから「オイ‼︎」とデカい怒鳴り声が耳に響いた。
別校舎との渡り廊下の方から、3年らしき生徒達がやってくる。
ボンタンに校則無視な髪型、見るからに不良って感じ。
「テメェらドコ中だゴラァ‼︎」
「勝手に入って来てんじゃねェよ‼︎」
案の定、ソイツらはアタシらに怒鳴って、ドスドスとこちらに向かって来た。
「女連れで殴り込みかァ⁉︎いい度胸だなぁ」
ガシッ グイ
「わっ」
不良の一人からいきなり腕を掴まれ、アタシは力負けして引かれるまま前のめりになる。
ドガッ ガン
「ぶっ⁉︎」
次の瞬間、その不良はマイキーの蹴りにぶっ飛ばされた。
窓に激突して気絶した仲間を見て、他の不良達は息を呑む。
「オレの女に触ってんじゃねぇよ」
「ひっ」
マイキーの怒る声を聞いて、鋭い眼光を見て、不良達はすぐ怯えた顔になった。
うーん、溝中不良が弱いのかマイキーが怖すぎるのか……両方かな。
「ありがとね、マイキー」
さっき掴まれた腕をぷらぷらさせながらお礼を言うと、マイキーはアタシを見てぷくっと頬を膨らませる。
「オマエも、オレ以外のヤツに簡単に触らせてんじゃねー」
「ごめんごめん」
油断してたアタシが悪いけど、そんな不機嫌にならなくてもいいのに。