第5章 8月3日
「テメェら三人で敵うと思ってんの?」
「ウッセェ、ボケ」
不敵に笑って返す三ツ谷の横で、アタシはチラッとタケミっちに目を向ける。
安静期間明けたばっかのタケミっちに、怪我させるワケにはいかないよね……
(やばい‼︎どっからキヨマサ君が襲ってくるかわかんないのに、この人数に囲まれたら守りようがない)
アタシは愛美愛主に目を向けつつ、タケミっちに声をかける。
「タケミっち、エマのトコまで退がって」
「!え……いや、オ、オレもっ」
「アンタは戦わなくていいから、エマの事だけお願い」
とはいえ、愛美愛主はざっと見ても50人以上居る……ドラケンが動けない今、三ツ谷とアタシだけで守り切れるかな……
「行けるか?ユウ」
「うーん、時間稼ぎならなんとか……」
たった二人で全員を蹴散らすなんて無理だし、それなら最初から時間稼ぎ目的で動いた方がいい。
多勢相手は、一斉に襲い掛かられんのが一番マズいから、出来るだけヤツらの動きをバラつかせる必要がある……
「アタシ達は派手めに動いて、勢いで押す。ヤツらに躊躇するスキを作らせて、みんなが到着するまでの時間を稼ぐ──で、どう?」
「りょーかい」
アタシの作戦はかなり無茶なものなのに、三ツ谷はフッと笑って応えた。
追い詰めるのを愉しむように、愛美愛主がゆっくりと近づいてくる。
「四人まとめて、やっちまえ」
ペーやんが、冷たく言い放った。
(どうする⁉︎)
──バンブー
「!」
遠くから微かに、でも確かな重低音が、耳に届いた。
ババンブー…
「ふん!やっと来た」
「この排気音」
ドラケンと三ツ谷が口角を上げる。
「遅いよ…」
アタシは自分の胸に手を当てて、早る鼓動に苦笑った。
参謀としてはダメなんだけどな……排気音聴くだけで、安心しちゃうなんて。
「マイキーの〝CB250T(バブ)〟だ」
「ちっ」
ドラケンが告げた言葉に、ペーやんは舌打ちをして、愛美愛主の隊員達には響めきが走る。
その直後、一際大きく排気音が響いた。
ズザァァァ
この場に姿を現したバイクが、地面を擦りながら急停止する。
「マイキー!」
バブに跨って現れた総長(マイキー)の姿に、全員の目が集まった。