第5章 8月3日
「ペーやん!テメェ!!!何、愛美愛主とつるんでんだよ」
「ウッセェ、三ツ谷。テメェも殺すゾ」
「ペーやん‼︎タイマンならまだしも大人数で奇襲なんて、何でそんな長内みたいなマネ出来んの⁉︎」
三ツ谷を睨んでいたペーやんの目が、アタシに移る。
「テメーに何がわかんだよ、ユウ」
一瞬だけペーやんの目が見開かれたのを、アタシは見逃さなかった。
アタシの傷だらけの左腕に……アタシが怪我してる事に、驚いてるような様子だった。
まぁ、この怪我はアタシの自業自得なんだけど……
「弍番隊隊長の三ツ谷だ」
「強ぇぞ」
「女参謀が何でここにいる?」
「潰しにかかったんじゃねえのか」
ペーやんと睨み合いながらも、アタシは確信する。
やっぱり……アタシのトコに実行犯共を当てがったのは、ペーやんじゃなかったんだ。
ペーやんの目的はあくまでドラケンで、アタシに邪魔されないように別の場所に呼び出しておこうとして……それを、“誰か”に利用された。
ドラケンの元に三ツ谷と向かいながら、アタシは愛美愛主を睨みつけた。
「ペーやん、卑怯だよ‼︎いきなり後ろからバットで襲って、こんなに大勢連れてきて、それでも男⁉︎」
「……」
エマの訴えに、ペーやんは何も返さない。
「バット…」
それでドラケン、頭から血ぃ流して……そんな状態で、愛美愛主を相手にずっと戦って……
「あーー、疲れたぁ…」
掴んでた愛美愛主の隊員を地面に落として、ドラケンは体をフラつかせた。
「ドラケン君…大丈夫スか⁉︎」
「流石に、20人が限界か…」
アタシはドラケンの腕を掴んで誘い、彼にアタシの肩を掴ませる。
「そんな状態で、よく20人も倒せたね……危ないから、ケンはもう動かないで」
「ああ……」
ドラケンは大人しくアタシの肩を支えにしながら、ドサッとその場に腰を下ろした。
「あとは頼むぞ…三ツ谷、ユウ…アタマ痛え」
「ウッス」
「任せて」
ドラケンを背にして、三ツ谷とアタシは愛美愛主に向かって立つ。
(キヨマサ君がいない…)
タケミっちは、しきりに周囲をキョロキョロと見回していた。