第5章 8月3日
武蔵神社の階段下の駐車場に向かうと、そこには一台のバイクが停められていた。
カワサキのZ400FX……ペーやんの愛機だ。
ジャッ ジャッ
「!」
水を踏む足音が聞こえて、アタシはバッと音の先へ顔を向ける。
「ユウ!」
「ユウさん!」
そこには、アタシと同じくずぶ濡れの三ツ谷とタケミっちが居た。
「三ツ谷、タケミっち!」
ようやく合流出来た仲間の元へ、アタシは急いで駆け向かう。
「ねぇ、ケンとペーやんは──」
「ユウ、オマッ……怪我してンじゃねえか!」
アタシはドラケンの事聞きたかったけど、怖い顔した三ツ谷に左手を掴まれてしまった。
「あー、ここ来るまでに一回スリップしちゃったから……」
その時に思いっきり腕を地面に擦りつけてしまい、今のアタシの左腕は傷だらけ。
血は出てるし、雨が染みて痛いけど、傷はどれも浅いからほっといても大丈夫だと思う。
「スリップって…まさか、ここまでバイクで来たのか⁉︎」
「緊急事態だから止むを得ず」
深刻な顔した三ツ谷から「どこから?」と聞かれ、アタシは正直に「二中近くの倉庫から」と答えた。
「…………よく生きてたな」
「うん。今日は調子よかった」
「いやスリップしといて調子乗んなよ」
「だってしょーがないじゃん!緊急事態なんだから、手段選んでらんなかったの!」
(ユウさんって、バイクの運転下手なんだ……なんか意外だ)
アタシは三ツ谷とタケミっちに、「ケンはどこ⁉︎」と一番聞きたかったことを聞いた。
「オレ達も今探してて…」
「タケミっちは一緒に居たんじゃないの?」
「祭りは、別々に回ってたんス。この雨で、もう屋台の通りには人がいなくて……」
「じゃあ急いで探さなきゃ!」
アタシ達は、ドラケンとペーやんを探す為、神社の方へと走り出した。
「ドラケン君がペーやん君に狙われてるなら、早く知らせないと‼︎」
走りながら、タケミっちが焦った声で言う。
「ペーやんのバイクがあったって事は、もう始まってるかもしんねえ」
「ペーやん……何でよりによって愛美愛主なんかと」
その時、突然タケミっちが足を止めた。
アタシと三ツ谷は驚いて振り返る。