第5章 8月3日
「親友の家族を吊るした分」
バキッ
「親友の彼女を輪姦した分」
バキッ
「彼女の親を悲しませた分」
バキッ
「パーに長内を刺させた分」
バキッ
「そして……ペーやんを利用した分」
バキッ
ペーやんは、愛美愛主とは違う……どんなに怒ってたって、女を襲うようなマネ、絶対にしない。
戦ってた時より息を早くしながら、アタシは残りのヤツらに目を向ける。
「ヒッ」
「次はアンタよ」
速まる鼓動に、体が熱くなった。
◇◆◇◆
折れた角材を捨てて、アタシは携帯を取り出した。
少し前にマイキーから着信がかかってたけど、かけ直す事はしない。
アタシは、ボコボコになった顔から血と涙を流してる愛美愛主の実行犯達に目を向けて、ニコッと笑いかけた。
「良かったね?アタシがパーより優しくて」
アタシの皮肉に、ヤツらは喉を鳴らして震え上がる。
「アンタ達のこと、ホントは殺してやりたい程憎いけど……“通報”で勘弁してアゲル」
ヤツらの表情が、恐怖から絶望に変わった。
「パーは捕まったのに、アンタ達がノウノウと生きてていいワケないもんね。……そのツラ、次見かけたら、この程度じゃ済まさないから」
暗に「少年院に居た方が安全だよ」と脅しをかけて、アタシは廃倉庫を後にした。
中にいる時は気付かなかったけど、外にはいつのまにか土砂降りの雨が降り注いでいた。
アタシは傘もなしに歩いてく……冷たい雨に当たっても、体に籠った熱は冷めない。
実行犯共の物と思しきバイクのうち一台に跨って、エンジンをかけた。
廃倉庫から武蔵神社までは離れ過ぎてて、足で走って向かったんじゃ恐らく間に合わないから……
「ふぅー、落ち着けアタシ……大丈夫、大丈夫」
運転は大の苦手だけど、今はそんな事言ってられる場合じゃない。
ヴオンッ ヴオォン
冷や汗も、手の震えも無視して、アタシはバイクを発進させた。
「ケン……ペーやん……‼︎」
顔に当たる雨を鬱陶しく思いながら、バイクのスピードを上げた。
一秒でも早く、みんなの元へたどり着けるように。
◇◆◇◆
武蔵神社が見えるトコまで来た。
ここからは道が細くてアタシには難しいから、道脇にバイクを捨てて自分の足で走り出す。