第5章 8月3日
愛美愛主の一人に先回りされ、アタシは咄嗟に立ち止まると、窓枠を乗り越えて倉庫の中に戻った。
《今の声……オマエ、まさか今襲われてンのか⁉︎》
「大丈夫!これぐらいの相手なら、アタシ一人でもなんとかなるから」
《いいから、どこに居るか教えろ!》
「アタシの事は気にしないで」
倉庫の中央で立ち止まり、アタシは息を整える。
ペーやんは、マイキーとアタシを別々の場所に呼び出して、ドラケンを孤立させた所を襲う気だ。
動機は多分、ドラケンがパーちんを出所させる話に反対した事……
ペーやんの望みはわかってたのに、パーちんの為に理解してくれたと……アタシが、勝手に思い込んでいた。
アタシがもっとちゃんと、ペーやんと話し合っていれば、こんな事にはならなかったかもしれない。
だけど……今は、そんな事考えてる暇は無い。
後悔も反省も後回し!今は、東卍に起こってる問題を片付けるのが先!
「三ツ谷、悪いけど……アタシの代わりに、みんなに伝えてくれる?」
《オイ、いい加減に……》
アタシが諦めたと勘違いした愛美愛主のヤツらが、「逃げんのは終わりか?」と笑いながら近づいてくる。
近付いてくる敵を見据えながら、アタシは大きな声で宣言する。
「──東京卍會参謀・佑川和月の名の下に命ずる」
状況が状況だから、逃げんのはヤメ……コイツらぶっ飛ばして、アタシもドラケンのトコに向かわなきゃ。
「全隊員、今すぐ武蔵神社に集結せよ。武蔵祭りにて、予定通り決戦を行う──敵は愛美愛主!!!」
ドラケンを守って、ペーやんを止める‼︎
「参謀からの号令、ちゃんと伝えてね」
電話越しに、三ツ谷は「クソ…」と呟いて深く息をついた。
《……了解した、参謀どの》
「ありがと」
《気を付けろよ》
「三ツ谷もね」
三ツ谷との通話を切り、アタシは携帯をポッケにしまう。
愛美愛主の隊員達に向かって、構えを取った。
「あン?」
「なんだぁ?オレら相手にヤり合う気かぁ?」
「ギャハハハ!女がこの人数相手に敵うかよ」
「うるっさいなぁ…女一人捕まえれもしなかったクセに」
アタシが挑発するように笑ってやると、ヤツらのこめかみに青筋が浮かぶ。