第5章 8月3日
ザッ
後ろから人の足音が聞こえた。
ただし、一つじゃない。
「嘘でしょ……」
「オウオウ、ホントにいるじゃねえか!」
「ギャハハ!女が夜に一人で出歩いてちゃダメだろー?」
アタシが振り向くと、そこには6人のガラの悪い男の姿があった。
ソイツらは、いずれも愛美愛主の特攻服姿……後退るアタシを追い詰めながら、ニヤニヤと笑っている。
愛美愛主の隊員が何でここに……
「林の奴が上手く呼び出したみてーだな」
「東卍の女参謀サマが、ノコノコ一人であらわれやがった!」
愛美愛主が口にする“林”という名に、アタシは目を見開いた。
「まさか、ペーやん……」
「ギャハハハ!お仲間に裏切られた気分はどうだぁ?女参謀ちゃん♡」
「最っ悪…‼︎」
ダッ
アタシは踵を返し、地面を蹴るようにその場から駆け出した。
「逃がすな‼︎」
「いーなぁ、鬼ごっこかぁ⁉︎」
倉庫を飛び出して、外周を沿うように走る。
逃げながらアタシは、携帯でマイキーに電話をかけた……けど、一向に繋がらない。
もしかしたらマイキーも、今のアタシと同じようにどこかに呼び出されてんのかもしれない。
〜〜♪
「!」
考えてるうちに、アタシの携帯に着信がかかった……でも相手はマイキーじゃない。
「三ツ谷!」
携帯を耳に当てて、アタシは相手の名前を呼んだ。
《ユウ、今どこに居る⁉︎》
「今はっ……」
三ツ谷も何やら慌てていて、アタシの返事を聞くより先に、言いたい事を口にする。
《ドラケンが愛美愛主に狙われてる》
「は?」
《ペーやんが……あの野郎、愛美愛主の残党と連んで、『ドラケンをまくる』とか言い出した》
心臓が、早鐘を打つ。
アタシの抱いていた嫌な予感は、どうやらハズレだったようだけど……もっと悪い事が起こってしまった。
《〝ドラケン狩り〟だ》
ペーやんが、ドラケンを襲う?
マイキーを、東卍を、裏切った?
「……話はわかった。ケンは今、エマと武蔵祭りに行ってる。三ツ谷は、今すぐケンのトコに向かって」
《ああ。つーか、オマエは?家に寄ったけど居ねえから、てっきり……》
「居たぞ‼︎コッチだ」
「!」