第4章 Who is that girl?(事情)
「そうか。十番隊で上手くやれてそうで安心したよ」
『お役に立てているかは分かりませんが…隊の規律がちゃんとしてるし、皆さん本当によくして下さいます。』
「まあ、十番隊は末席まで指導が行き届いていて、バランスが良いイメージがあるよなあ。」
二人の脳内に一人の例外(副隊長)の顔が浮かんだが、それについては触れずに、二人はお茶を啜る。
気を許している恩人との席・久しぶりの味に紫苑は、しばらくぶりにホッとした笑顔を見せた。
『やっぱり十四郎さんのお茶、美味しいです』
「はっはっは、こだわりだからな。あとこれも用意したよ、好きだっただろう?」
『…!』
そう言って取り出されたのは、”久里屋”と書かれた和菓子の紙袋。
紫苑は、思わず目を輝かせる。
ルキアの影響で今ではすっかり甘党になってしまった紫苑は、中でもこの店の大福が大好物なのだ。
普段の慎ましい紫苑はどこへやら、幸せそうな顔で大福を頬張り始めた紫苑に、浮竹が問いかけた。
「——日番谷隊長は、どうだった?」
その瞬間、ギクリと動きを止める紫苑。
かぶりつきかけた2個目の大福を手に持ったまま、しばらく停止する。
”日番谷隊長”
その響きだけで、彼女の動悸を早めるには十分だった。
ドクンドクン、とうるさい心臓を鎮めるようにゆっくり手をおろしながら、紫苑は言葉を探す。
『——そう、ですね』
紫苑の緊張を感じ取りながらも、浮竹は穏やかな眼差しで、彼女の続きを待った。
『…まだ、ちゃんとご一緒したことはない、です。ただ、やっぱり…十四郎さんの言ったとおりでした。』
「——…それは、記憶のことかい?」
紫苑は、こくりと頷く。