第1章 呼び出しを食らいました
「逆に聞くけど、リング上がお仕事みたいなオジサンとこの空から舞い降りた天使みたいな俺が知り合いだとおねえさん思うの?」
『夜蛾学長の事遠回しにプロレスラーって言ってるじゃん……少年…。じゃあ、お父さんかお母さんはこの学校内に居るとか?はぐれているんだったら一緒に探そうか?』
見た目、口の悪さ。変にざわつくのは胸の辺り。
かなり恋人の…、五条悟に似てる。悟の隠し子って事が私の中でぶっちぎりで候補に上がってる。産みの母親がパパはここに居るから会っていでとか、そういう昼ドラ的物語が絶賛放送中だ。私の脳内で悟の像にパトランプをチカチカさせて囲んでるイメージが現在のシーン。全ての運転先から私が出てくるレベルで悟を問い詰めたい。けど真相を知る実際の彼は任務中だろうし…。
何故か高専に居る不思議な少年はむすっとして首を振る。
「……親はここに居ないけど?」
『じゃあ、君はどうしてここに……、』
見上げる少年は私のもう片手を手に取る。両手を繋いだ形で身長差はあるものの見つめ合った。
「悟」
『はい……?え、まさか君は、』
──少年の口から悟の名前が出た。ずき、とする胸の奥。まじか、きっついな…この子の父親の名前が悟って言ったら私はどういう顔して悟に会えば良いんだ?流石に隠し子が居るって人と恋人以上の関係を続けたって……。
ちょっと父親らしき名前を出され、落ち込む私を見て少年の口元が少し弧を描く。
「おねえさん、さっきから俺の事キミキミ言うから教えてあげる。俺は五条悟」
『は…さと、る………悟くぅん??』
疑うもなにも、目の前の少年が同姓同名を名乗りだす。そんな事あるのか?自分の名前と同じ名前を子供に名付けるとか?あるかも…悟ならあるかも……。悟二世だとかそういうテンションで自分の分身に名前をつける。もしくは相手の女が認知されないから悟って着けてやらぁ!って展開も…。
頭を抱えたくなるくらいにこんがらがる現状に私は大事な事を思い出した。私は突然の校内での子守イベントに遭遇してしまったってだけで本来は医務室に呼ばれていたんだった。
悟君の前でしゃがむ。私がしゃがむと目線は大体同じくらいになった。