第6章 オマエがママになるんだよ
「…同じこと考えてたんだねえ…」
はにかむ夏油。しがみつく悟の力がちょっと増した。
「……やだ、傑は帰って!おかあさんとふたりっきりが良い!」
『ミ゙ッッ……!そのふたりっきりが私にはイケナイから、隣の部屋で夏油さんと悟君で寝て貰っても良いかなあ!?頼むよぉ、悟君、私を暴走させないでくんないっ!?』
この気持ちはなんて名前を付けたら良いんだろう?尊い、とかかな。あれほどまでに強気がちな、子供らしさをたまに見せてた悟。
夜になってホームシックなのかさっき言ったおかあさん、というトドメの一言に私の中の何かが弾けた。変な趣味とかじゃなくて本能的な。本格的に甘やかしまくりたい気持ちを抑えながらに服を着ていない悟を抱き上げる。それでもなお離れない悟になんだかお腹を痛めて産んだ我が子のような錯覚さえ感じてる。
あれ、一年近くお腹で育ててませんでしたっけ?五年ぶりの再会?母としてまず風邪引かないように服を着せなきゃだね……。
『服、ヲ…着セナキャ…』
「君大丈夫かい…?変にブルブル震えてるし……私が悟の服を着せておくからお湯が冷めない内に君も入った方が良いんじゃない?目を離しちゃいけない大人になっているよ……?」
色んな意味を含めて心配そうに覗き込んでくる夏油を見て、抱きかかえる悟のもちもちとした背を撫で、まだ濡れてる髪を撫でる。
『……ぐっ!』
「駄目そうだね……」
目をつぶり、抱きかかえた悟を夏油へと向けると受け取られたらしく。瞼の外で「やー!」「こらこら暴れない」と揉めていてそっと目を開ける。
嫌がる悟と夏油が揉めてる。なんとも微笑ましい光景。
『……ふふっ、なんか親子みたいですね、お父さんと息子みたいな』
「いや、悟が息子とか私……それは…ちょっと…」
「ねえよ?」