第5章 目覚めんなッ!母性!
むすっとした表情で両手でグラスを持ってこくこくと飲んでる。まあなんて可愛い。すっ…と携帯を出しカシャ、と写真に収めて居ると夏油がちょっと苦笑いをしていた。
さて。悟は夏油が見てくれてるだろうしこの隙に私はお風呂を早く洗って、お湯を張ってしまおうと浴室へと向かった。
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ちゃんとふたりでお風呂入れているのかな?悲鳴とかは聞こえない、たまに笑い声が聞こえるから上手くやれてるのだと思うんだけど…。
ガタ、と浴室の方から音がする。
風呂上がりなんだろうふたり。「悟っ!」という夏油の声とどたどたと駆けてくる小さな足音。
なんだろ?と浴室には行かずにその場で浴室方向を見れば、片手にタオル、そして全裸で駆けてくる小人。
「拭いてっ!」
ちょっと楽しげな笑顔だったから夏油とのお風呂は楽しめたんだろうけれど、男の子の裸体をタオルで異性の他人が拭く展開って私の配慮が意味が無くなるのでは?と強引に渡されたタオル。
はいはい、としゃがんでタオルで悟の体を拭く。髪をわしわしと拭いた後に前面を。ほかほかしてて拭いてる最中にしゃがむ私の首にがしっ、と抱きつく悟。
は??い、意味が分からないんですが…?拭く手も疎かになりつつもゆっくりと背中、お尻とタオルで拭きますけど…。
「おかあさん……っ」
『……っ!!?』
このタイミングで呼んではいけない単語を言いやがった…!ぎゅうう、と抱きつく悟。急な展開に頭がおかしくなりそうで。
ほぼ耳元での言葉に硬直。視線の先、袈裟を着崩した夏油が頭上にタオルを乗せてひょっこりと出てきた。濡れてる髪を降ろしてるとまた印象が違うんだけど今は悟だ、この子の話だ!
『げ、夏油さんなんか悟にしました……?』
「いや、全く……普通にお風呂入って君に体拭いて貰うって走って行ったよ……。ああ、そうだ。ものは相談なんだけど、」
『あの、私もものは相談なんですけど、今日泊まっていって下さいませんか?隣の悟の部屋に!このままだと私色々と無理なんで…っ!』
具体的に母と子になりかねないというか。唇を噛んで母性に耐える。この子は悟、いずれか大人に戻る、呪いで子供になった悟…っ!