第5章 目覚めんなッ!母性!
残念そうな表情でカラン、と半分ほど詰まったグラスに長いスプーンが当たる。
注文時は食べれるんだ、と思ってたけれど入らなかったか。小さいながらも胃も小さいもんなんだなあ……と、もう少し食べられそうな私はその残りに手を出した。アイスがほとんど溶けてコーンフレークがしっとりしてる。けど、食べられるなら残すよりはお腹に収めた方が良いし。
「残しちゃってごめん…」
『ん、いいよ。悟君がお腹いっぱい食べられたなら良かった、それ以上食べたらお腹壊しちゃうだろうしね』
こうして夕食を終えた後は買い物袋を下げ、そして空いた手に悟の手を握りしめて駐車場へと戻っていく。なんだこの……仮にも一時的な世話係、姉気分であったのに冗談抜きで母気分になりつつある。
るんるん気分で高専へと帰ると、恐らくは任務を終えたであろう夏油と建物の外、外灯の側で出くわした。
夏油は悟を見てそのまま視線が私へと向く。にこ、と優しげに笑う夏油。こんな時間に袈裟を着てる人に会うのは普通では恐怖を感じるだろうけれどここは高専だし。
「おや、悟と仲良く買い物帰りかな?」
『夏油さん!そうなんですよ、買い物とご飯を済ませに行ってきまして……夏油さんはこれからお帰りですか?』
「ああ、うん。任務も終わったしね、今から帰ろうと思ってたんだ」
ほんのりと呼気から食事を済ませてはいるんだろうな、と確信しつつ。
見上げる悟を見てから夏油を私は見上げた。
食事は誰とでも出来る。私でも瀕死になりつつ出来た。でもこの部屋に戻った後の話、立ちはだかるお風呂イベント。これは事案では。
ここで夏油に会ったのは天からの助け舟では?と私は決心した。男女一対一じゃないし、一緒に夏油の親友である悟(小さいけど)も居るし…。大丈夫やろ…。
『あの、帰る前にひとつ頼みごと良いですか?』
「ん?なんだい?」
じっとこちらを見てるだろう、しっかりと手を握りしめる悟を見て、夏油を見る。
『あのですねー、流石に私が一緒だと気まずいだろうし、同性である夏油さんに悟君のお風呂を手伝って貰おうかなって…夏油さんに頼んでも……駄目、ですか?』
「あ、ああー……」