第3章 目覚めろッ!母性!
「……未成年がこんな時間にうろついたらおまわりさん来るだろ。なら、若いお母さんのフリでもしといた方が良いじゃん。俺のおかあさんのフリ。
見た目ってのは服装から決まるんだよ……」
『えっ、私悟君のお母さんをするの?』
まさかの兄弟プランから親子プランに乗り換えをご所望でしょうか…?と悟に屈みつつ声量を抑えてひそひそ話をふたりでする。
ちょっとだけ見上げた悟が頷いた。
「ん、俺とおねえさん姉弟って言っても全然似てないし親子くらいの方がしっくり来るんじゃないの?」
まあ…考えてみりゃ一部私の髪が白いとはいえ、白髪の作りが違うからな、悟とは。
親子の年齢だと、ギリイケるっちゃあイケる、けど…。姉と言い張って変なのが近寄るよりは良いのかもしれない。小さくてもかなり切れるみたいだ、この子は。
ちょっと納得した私は少し落ち着いた服を探す。若いママさんならこの辺りの服着ていそうだな……。
『……これとか若い母親感あるかなあ、』
「もっと清楚なやつにしたら?」
『清楚……、こっちの控えめな方とかかなあ…』
小さい子なのにしっかりとした意志を感じる。好きに着たい服じゃなくて落ち着きのある服を手に取って体に当てて見せると、悟はじっと下から上へ、上から下へとくりくりとした青い目で往復させて、ふん、と笑った。
「うん、人妻感出てて良いんじゃない?僕は良いと思うよ?」
『君、大人みたいな事言うね~……悟君くらいの歳でそういう単語ぱっと出ないよ?』
私がつっこむとぷい、と顔を反らしてこの場から走り出す。向かった先は積み上がったカゴ。手をのばすも一番上に指先が届くくらいでその仕草が可愛い。こう、心臓をきゅうう…っとされるような。
手に取った悟のお墨付きのものを持って必死な小動物の元へと行く。カゴに服をぽんと入れて、カゴをひとつ引き抜いた。
『じゃ、次は悟君のお洋服買おっか!』
「……ん」
小さい子との関わりは大きくなった今じゃないもんだから、出来るだけ好みに合わせようとしてる。
正直、今彼の着てる伊地知のチョイスが完璧だ、知能が幼児退行したであろう悟によく似合ってるし。
このくらいの男の子ってどういうのを好むんだろうな?と、とりあえず手に取ったものを勧めてみる。きっとこういうの好きなんじゃない?