第3章 目覚めろッ!母性!
今でもそう、一部の呪術師に私は狙われている、だからひとりでの行動は出来ないのだけど、小さくても悟が居るし姉と弟くらいに見えてりゃ良いかな、とひとりではない事で出かけようとしていた。
……悟の小さい頃から春日家について知ってたのかなあ。それとも、そういうどこで覚えたか分からない口説き文句をさらっと言ったのかなー…。
じーっと覗き込んでいると機嫌がだんだん悪くなっていく顔。あ、これ毒吐く手前ですわ。察していれば開く唇。
「早く車出しなよ、亀だってもっと早く動けんじゃない?トロすぎ、おねえさん足ついてたよね?」
『んっ……グ、は、はぁーい出発しますねーっ!ごめんなさいね、トロくさくって!』
やっぱクソ生意気なガキンチョ!もう!……急いで運転席に乗り込んで私は車を発進させた。
服屋にまず行って、それからのご飯はファミレスかな。ルートを決めて車を走らせていく。
やっぱりこの小さくなった悟、じわじわと呪いが効いてるんだろうな、おしゃべりな彼が黙ってる。なんだ、小さい時の方が大人なんじゃないか。黙っていれば本当に悟なの?という疑いが生まれるほどに。
可笑しくなってひとり、運転しながらくすりと笑みが溢れる。生意気ではあるけれど、ルームミラー越しに見る悟はくりくりとした目で首を伸ばして外の景色を見ていたから。それが子供らしく感じて、見たまんまの少年らしさが可愛くて。口を開けば生意気だけど静かに過ごす姿は子供っぽい。バランス良く成長してくれれば大人の彼ももう少しオトナになれたろうに。口の悪さが減ってこのまま健やかに成長した状態で大人の彼に戻りますように、なんちゃって。
私の笑い声は小さかったはずなのに、きょろ、と向く顔。
「なに笑ってるの?思い出し笑いはキモチワルイよ、おねえさん」
『君言葉に棘あるねー…?別に思い出し笑いじゃないですー』
可愛い、なんて言ったらこの悟はちょっと怒りそうだな、としっかりと気を引き締めて賑やかな街へと車を走らせて……。
『この辺りで用事を済まそうかな。良いお洋服あると良いね』
「……ん」