第7章 新年早々出久くんとイチャラブ姫始めしたいなと思う話
『いつも聞き分けが悪くてごめんなさい…』
「お酒を飲まされたとは言え、酔ったまま一人で出歩くとか、もし僕が駆けつけていなかったらどうなってたと思う?」
まぁ、多少叱られることくらい予想はしていた。一度はともかく、二度も攫われそうになった自分に呆れてしまってる友人に対し、秘多は深々と反省を口にする。
「しかも薄着でっ、風邪まで引いたりしたらーー」
腕を組んだ緑谷がまだ何か話しているようだが、それを聞いているようで聞いておらず秘多は据わった目でぼんやりと彼を見詰めていた。
実物だ、本当に来てくれたんだと内心感動はしているものの、酒気がまだ抜けていないせいで頭の周りがじわじわ締め付けられるような感覚に苛まれる。
「心配、掛けたね。助けに来てくれてありがっ……」
気分が徐々に悪くなり、そそくさと口を手で抑えた。
「ねぇ…大丈夫?」
『……』
顔色が悪いことに気付いた緑谷が心配そうに覗き込んで来ると、咄嗟に後退った。少し身体を動かした拍子に強い嘔吐感が襲ってくる。
『……ごめっ、無理…う”っ……』
マズイと思い絶対吐かないよう集中力を振り絞るが、我慢出来ず秘多は隠すように背を向く。むせ返りつつ胃の中のものを出してしまい、苦しそうに地面に座り込んだ。嗚呼、本格的にハングオーバーをかましてしまった…。
『っ……見ないで』
静かに懇願するが緑谷は慌てて駆け寄り、急いでハンカチを口元に持っていくと背中を摩り始める。みっともない所を見せてしまった自分を責めるも、少年の思いやりを振り払うことは出来なかった。秘多は無言のままそれを受け取り、口を抑えながら殆ど力の入らない身体を立ち上がらせた。
『っふ……出久くんのハンカチ、柔軟剤の匂いするー……』
「無理しないでねっ…」
『大丈夫……だよ』
酒酔いでまだ半分ふざけている自分に、今度は半纏を羽織らせてから身体を支えてくれた。何から何まで申し訳なくて、どうお詫びしたらいいのかとぽわぽわする頭で考えてみるが、残念ながら今は何も思い浮かんでこない。せめて表情だけでも平気を装い、結んだままの唇に薄笑いを浮かばせる。
『良く場所が分かったね…』
「通話から潮の音が聴こえてたんだ。地元の海と言ったらあの公園だろうと思って」
『そっか……』