第7章 新年早々出久くんとイチャラブ姫始めしたいなと思う話
ガシッ
「夜中一人危ないよ?具合悪そうだし、家まで送ってく?」
『…結構ですっ、離して』
自分が転びそうになるところを男一人に腕を掴まれ身体が支えられる。助かったとはいえ、見ず知らずの男性に馴れ馴れしく触れられて、嫌気がささない訳ない。引き離そうと力んでも、ガッチリ捕えられているのだから尚更だ。
『う“っ……』
「今にも倒れそうになってるよ、お嬢さん。行こう?悪いようにはしないから」
男達から漂わうキツめの香水の匂いによる吐き気が秘多を襲う。抵抗の意思を完全無視し、腕が引っ張られる。正常の状態ならこんな域を超えたナンパ、疾走して警察やヒーローの人に通報出来るのに、酒酔いで平衡感覚が乱れてしまっている。緑谷の言葉を聞き入れなかった自分が恨めしい。このままではまたーー。
バッーー
「彼女に触るなっ」
突として強く言い放たれたと同時に、誰かが間に割り入って自分を掴んでた手がやっと引き剥がされた。聞き覚えのある声の方に、若干二重に視える視線をゆっくり上げる。
「どう見ても嫌がってるでしょう?」
見慣れた背丈、緑が掛かった癖っ毛の頭。本当にいるんだ……、ピンチにさっそうと現れるヒーロー。少年が付け加えて言うと、男達の眼の色が変わりあぁ“?と、いかに輩くさい口調で敵意を露にする。それでも緑谷は何一つ怯まず、彼らをキっと睨みつけていた。
「おいおい、ヒーロー気取りかぁ?」
「そう捉えるということは、明らかに犯罪紛いなことを未成年にしようと目論んでましたよね。大人しく警察署に出頭してください」
既にスタンスに入っている緑谷にとうとう痺れを切らしたのか、輩二人が一斉に飛び掛かる。
『出久っ……』
ーー…
「動かないように捕縛しておいた。後は警察かヒーローが駆け付けてくれれば良いんだけど…」
あの後、気休めに海辺公園から離れた場所へ移動した。自分を連れ出そうとした二人はあのまま置いてしまったが、きっと眼が覚めた頃には務所に入れられているだろう。ナンパなんてせず大人しくていれば綺麗な初日の出が見れただろうに…。
そんな呑気なことを考えている秘多を、一応籠手の装備だけしてラフな寝着と半纏を羽織っている緑谷が見詰めていた。その格好であのド三流組を瞬殺とか流石雄英のヒーロー科……、と言いたいところだけどーー。