第7章 新年早々出久くんとイチャラブ姫始めしたいなと思う話
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『?』
手元のスマホを見下ろすと彼の名が着信画面に表示されていた。意地悪く無視しようかと思ったが、根に持たれてでもしたら厄介なことになりかねないので、取り敢えず話だけは聞いておこうと応答ボタンを押した。
『はい、もしもし』
「今迎えに行く、そこ動かないで」
『えっ…?』
それだけ言い、今度はこっちから通話を切られる。秘多はハテナを浮かばせながら拗ねるとスマホを雑に仕舞った。火照った口から深い息が溢れ、空気が微かに白くなる。
『出来るものならやってみなさい……』
しきりに風が鳴っているのを耳元で感じながらそうぼやく。あの短いやり取りで得た情報で簡単に見つけ出せるとはとても思えないが、それでも迎えに来てくれると何処かで期待している自分がいた。
過去に一度、個性も満足に扱えない、あんなボロボロな格好でありながら勇敢に戦って救けに来てくれた彼のことだ。もしかしたら本当に?なんて思うと浅ましくも胸が躍ってしまう。
そこまで心配してくれるなら、少しくらい待ってあげてもいいかな…なんて。案外緑谷に甘いのかもしれない。時間潰しに暗い海辺を見渡せば、複数のカップルやグループが集まっており、時計の針が0時を指すまでの間、若くは初日の出を見にそれぞれ時間を潰していた。肌を刺すような寒風が痛いのによくやる、自分ならすぐにでも暖を取ってみかんでも頂きたいものだ。
『うっ…やっぱ戻ろうかな』
酷く肌寒いと思ったら上着を着ていなかったことを今しがた気付く。それさえも家に置いて来てしまったのを後悔しながらヒリヒリになった指先を温めていると、外から伸びてきた影が自分のを覆った。
「ちょっとそこのお嬢さん、その格好で寒くない?」
声がした先にチャラそうな男性二人がニマニマとしながらこちらに近付いてくる。秘多が不思議そうに眼を瞬かせるが、直感的に危惧の念を抱いた。見た目からして20代前後くらいだろうか?大変失礼だけど、外見的に頭が悪そうな輩だ。
「急にごめんね、可愛かったからつい話し掛けちゃった」
酒気で半ば朦朧としている頭でも、これはナンパだということは理解出来ていた。除夜の鐘が鳴っている時に、女子高生に声掛けるとはなんて悪趣味な…。そう思いながら秘多は後退るが、バランスを誤ってしまい躓きそうになる。