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緑谷出久と裏の青春をするシリーズ

第6章 パーティーを抜けて出久くんと深夜のスローダンスをする話


通常のプリクラと違い、中は狭く二人で座れるのがやっとのスペースだ。 

『撮るよ…はい、笑って』

緑谷は仕方なくレンズに向かって強張った笑みを向け、彼女の横に近付けた。パシャッと古めかしいシャッターの効果音が鳴る。

『え……出久くん、証明写真じゃないから』
「い、いやっ、あの、だって…」
『もう一回ね』

秘多が再度ボタンを押しカウントダウンが画面に表示される。次はリラックスと言われても無理だと思った途端に、彼女に頬を口付けられ、そのまま2回目のシャッターが切られた。

「っ!」

無論、それであわてふためく様子の緑谷と秘多の楽しそうな表情が、残りの枚数に転写され、案外良い写真となったらしい。

『良く撮れてるよ…後でスマホにも送る』
「あ、ありがとっ」

印刷された写真を嬉しそうに眺めている秘多を横目に、緑谷は手元を震わせながらグラスに入ったドリンクを飲んだ。シンプルに嬉しいけど、その写真を貰っても直視出来る自信がない…。それでも、彼女の無邪気な表情からして、楽しんでくれているのだと分かると、強張った頬が僅かに綻びる。

オーペニングセレモニーも丁度終わり、自分達を含め客人等がそれぞれ散るようにして、残りの娯楽を堪能した。不慣れなんだし、堅苦しい接し方は辞めにして、心ゆくまで楽しむとしよう…。

『さて…踊ろっか、出久くん』
「早速??」

そう言い、秘多は先にホールへと歩み寄り、緑谷に向かって手招きをする。ガッチガチだが、意を決して彼もそこへ足を運んだ。

優しいメロディーが流れるに連れ、ペアを組んだ男女等がムードに合わせてゆったりと踊り出す。一度はダンスチームをクビにされた身からして、正にここが大難関に等しいだろう…。

『今まで女の子と組んで踊ったことは?』
「……ないです」
『だよね』

緊張気味に、見様見真似のお辞儀の後、お互い手を取り合った。





…ーー

『ッタ…!』
「ごごごごめんっ足踏んだっ!」

ステップを間違えられ、痛みに耐えながら秘多は改めて理解した。彼はダンスに於いて、まぁ……お世辞でも上手いとは言えない。

足は踏まれるし、人にぶつかるし、危うく腕の関節も逆の方に曲がるところだったし…。肩と手の強張りからして、まだ緊張しているのが丸分かりだ。
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