第5章 雨の良い雰囲気を激情した出久くんと秒でブチ壊す話
『いずっ…んっ♡…』
息苦しいのに、嫌だとは思わない。薄ら目を開けてみれば、緑谷も余裕なさそうな熱烈とした瞳で見詰めかえしてくる。
それが妙に色っぽくて、また気持ちが昂ってくると我慢ならず秘多も舌を伸ばして絡みつき、彼のと一緒になって口内の甘い味を堪能した。
「っ…んむ、は…♡」
『んんっ…♡ん…』
雨とはまた別の、ぴちゃぴちゃと湿った音が吐息と共に響き渡る。酸欠で意識がぼーっとしてくる秘多の身体が徐々に滑り落ち、ベンチに背を預けたところで緑谷は口吸いを続けながら彼女の身体に覆い被さった。
「ダメだよ…」
緑谷をせめて抱きしめてあげたくて、背中に腕を回そうとしたら、両手をがっちりと頭上に固定された。触らせてくれないもどかしさからゾクゾクと被虐心がくすぐられる。
「気持ちいい…?」
『はっ…♡』
やっと離された両側の口から熱い吐息が漏れる。抵抗の意思一つ見せない彼女の首の匂いを嗅ぎながら、緑谷は濡れたシャツに手を掛け始めた。
あれだけ際どい場所を避けたがってた少年が、こんなせっかちに自分を求めてくる。ドキドキと胸を躍らせつつ秘多は自分の上半身が彼の手によって肌蹴られるのをただ見詰めていた。
「これも脱がすね」
そう言い、下の服装まで透かさず剥ぎ取りその場で雑に落とされる。多少に壁で覆われているとはいえ、こんな人目が付きそうなバス停でほぼ裸の状態にされては流石に秘多も困惑した。
『やっ……』
そんな様子に気付いたのか、緑谷がさっと自分のシャツを脱ぐと中のアンダーと一緒に放り投げた。そんな光景に、咄嗟に目が釘付けになる。
優しい顔に似合わずとも、ガッシリと筋肉が付いた身体は自分より広く、本当に男の子そのもので…。かっこいいなと見惚れてしまい、口籠ることしか出来なかった。
『い、出久くん…聞いて、私…っぁ♡あん…』
「んむ……ごめん、聞いてあげれそうにない」
むき出しになった胸元に滴る水滴を舐め取るように熱い舌が這わせられ、秘多の身体はフルフルと震え上った。奥に雄としての熱を感じる瞳に見据えられ、少し優しく微笑んだかと思えば、冷え切った肌にピリっと吸いてくる。
『うっ…あっ♡や…』
二つ三つだけじゃ緑谷は満足いかず、隠すことも儘ならないくらい濃い目の痕を付け足された。