第5章 雨の良い雰囲気を激情した出久くんと秒でブチ壊す話
『……まだなにも、でもーー』
緑谷は固く瞳を閉ざし、拳を握り締めた。
ただの友人が、しゃしゃり出てる訳にはーー。
『じ、人生経験としてアリかなって…少しだけなら、なんてーー』
「それは駄目だ!!」
張り詰めた空気を破るように、荒立てた声があたり一面に響き渡った。
ガシッーー
『……っ!』
驚愕から身じろぐより先に身体が後ろの方へ引っ張られ、鈍い打撃に襲われる。同時に、持ち抱えていた鞄が中見ごと地面に落ちどしゃりと音を立てて水浸しとなった。
『出久っ……』
掴まれた秘多の両手首が強く小窓に押し付けられる。背中が壁に当たった鈍痛から眼を開くと険しい顔をした緑谷が瞳一杯に映り込んだ。
「そんなの嫌だよっ、僕は…」
唸りをあげている曇り空がまるで彼の激情を表しているようだった。行くな、と自分を睨み付けている瞳孔がそう訴え掛けている。普段遠慮がちな緑谷にがっちりと手首を掴まれて少し痛むものの、それが独占欲の表れだと思うと不意に胸が高鳴った。
「渡さないよ」
『っ……』
思い付きで出てしまった自分の「偽言」を信じ切ってしまった緑谷を見て良心が痛んだ。
「置いてかないでっ…密ちゃん」
『出久くん、私っ……』
過去に自分がそう緑谷に懇願したことを思い出し、秘多は落ち着かせようと口を開くが、昂ぶりから喉が詰まって言葉が出て来ない。君を置いて行ったりしないから…、そう言いたいのに。
哀しげな顔をじっと見詰めていると、不覚にも視線が唇の方へ行ってしまう。謝るより先に触れたいと思う衝動に駆り立てられ、秘多は堪らず口付けようと前に出ようとするが、緑谷はそれを見切ったかのように避け、彼女の身をまた小窓側の壁に押し戻した。怒らせてしまった……、そう思った次の瞬間ーー。
チュッ……んちゅ♡くちゅくちゅっ♡
『んっ…!ふ、んん…っ』
有ろう事か、緑谷に荒らしく口付けられ、秒で口内を犯すように弄ってきた。逃がすまいと両手も口も捉えられて、身動き出来ない秘多がくぐもった呻き声を漏らす。
激しく貪られて行為を止めようと腕を力んでも、やはり男の力には敵わい。なすがままに身体を押され、舌を絡み取られては下唇を食まれる。