第1章 学校すっぽかして出久くんとちょいとエチエチする話
急に何を言い出すのか、変な誤解を招かないよう噛み散らかしながらも弁解しようとすると、少し悪戯っぽく微笑む彼女の手がゆっくり拳をなぞってきた。
『見て』
「なっ…秘多さん?!」
『しっ…』
口元に人差し指を立てながら内緒に隠してあったであろう如何わしき雑誌を2人の間に置き、ランダムにページを開いた。そこは裸体を曝け出している女優の写真集に卑猥なキャッチフレーズで埋め尽くされているスプレッド。年頃の男子学生なら一冊や二冊持っていてもおかしくない代物だ。雑誌を探していた途中で見かけただけだが、確か成人向けコーナーもあったはず。
どうして彼女がそんなものを??反射的に緑谷は赤面しながら目を逸らした。
『出久くんもこういうのに興味があったりする?』
「駄目だよ秘多さんっ…そ、そんなもの僕たちが見て良いわけがーー」
スリっ
甘い香りが鼻を擽る。気になって緑谷が横に振り向くと秘多が間近にいて、互いの肩をくっつけてまで擦り寄ってきた。煽るように自らセーラー服の裾を少しだけたくし上げ、淡い色のブラジャーとその素肌をチラつかせる。
『そう?』
あの物静かな秘多密とは思えない。誘っているのか、それとも本当はからかっているのか、どっちにしろ胸の高鳴りは増していく。
『ドキドキするね…』
「…ま、マズイって。秘多さんっ」
見詰める双眸が少年を釘付けにする。心臓の鼓動が耳の鼓膜まで届いたころには、互いの息が顔に掛かるくらいに近くなっていた。これ以上詰め寄られたら本当にっ…。緑谷はいざという時に彼女の二の腕に手を添え阻止しようとするがーー。
『好きでもない子とキスするの無理?』
秘多の手が緑谷の片方の拳を優しく握る。
無理という訳じゃーー。ちょっとだけ可愛いなって思ったけど、本当にそれだけで。まったく接点がない、視線を合わせたことすらない女子のクラスメイトなのに、秘多さんとなら…なんて。
チュっ
「秘多さっーー」
『しちゃった』
少し頬を赤らめながら彼女が囁く。僅かに香るミントのリップが自分のを掠めたという事実が脳内に届くまでそう掛からなかった。顔に火が着いていても可笑しくないくらい熱い…。全くと言って良い程どう返していいのか分からず、緑谷はワタワタとし始める。