第4章 折寺中を訪れたら出久くんとわいせつ行為をしちゃう話
『私もそれを見習って頑張らないと…』
「ヒーロー科じゃないんだよね?密ちゃんの知識量なら雄英も受かってったと思うけど」
『全く過らなかったかな…そもそも私の個性じゃ不向き出し』
付け加えて「一緒に通いたかった?」とからかう彼女に、緑谷は反射的に肩を跳ねらせ赤面する。確かに彼と同じ高校に通えたなら、それもきっと楽しいだろうな…。
普通科やその他の部門ならギリ入門出来たかもだけど、自分がヒーロー科になんて、まるで雲を掴むような話だ。ところが、その更にありえないことを、目の前の少年は成し遂げたわけだが。
「前々から気になってたけど、密ちゃんの個性って…?」
『ふふ……なんだと思う?』
うっ…と唸る彼の声に秘多が面白がる。個人のことになると良くはぐらかされるが、それも少し慣れてきた緑谷は、視線を伏せて親指を口元に当てながら、彼女の謎解き問題に思考を巡らせた。
ブツブツブツブツブツブツブツブツ…
「でもそれでは彼女がヴィランに抵抗しなかった理由にならない。戦闘に不向きなのは、その個性を常に使える訳じゃないからか?一定の条件が整っていないと発動出来ない個性とすればーー」
姿だけなら格好良いのだけど、相変わらず凄い量のブツブツと分析力に、秘多は静かに冷や汗を掻いた。それも自分という、たった一人の人間に関するもの。耳を澄ませば、彼の視点から見る自分がどういうものかを知らしめられて、何かと恥ずかしい。
特にプライベートのことはあまり口に出さないで欲しい……お願いだから。
『う、うんっ…戦闘や救出活動に適していないとこ辺りはあってると思うよ』
「いや、でも身体の其処彼処に個性を出せるようなパーツは見当たらなかった。憶測だけど、他者に心理的な作用を齎すのも考えられる。或いはその逆かーー」
ブツブツブツブツブツブツブツブツ…
『……』
中々考察モードが解除されないことに呆れ、秘多はグラスに入ったアイスティーを飲みながら彼が我に戻るのを待った。
「……」
『そんなに気になる?私の個性』
店を出て、余っている時間をどう過ごそうかと、緑谷に尋ねようと振り返ってみれば、今でも思い詰める表情を浮かべて腕を組んでいた。