第12章 疲れ勃ちした出久くんとヤリたい放題のバカンスに沼る話
ご無沙汰だったとしても、何をどうしたらここまで溜め込むことが出来るのだろう?そううっとり考えながら、秘多は口角にこびりついたモノを指で掬い、徐に舐め取っていく。それも口いっぱいに広がる精液特有の味を愉快に堪能しながら。
「はぁ……ぁっ……密、ちゃん……」
そんな濫りがわしい光景を目の当たりにして、緑谷がとうとう力尽きたように床にへたり込む。その拍子で首に巻き付けてあった黄色のマフラーがふさりと滑り落ちるが、今の彼にはそれを拾う気力すらなかった。
『ねぇ、逃げよう?今は二人っきり……』
長らくしなかったスキンシップで心臓が早い鼓動を刻み始める。秘多は精子まみれになった顔をさっと拭うと、膝上を跨ぐ形で緑谷を抱きしめた。
「駄目、だよっ……」
『大切にしてあげたいの……、君のこと』
耳から直接注がれるようにして脳に語りかけてくる誠実な誘い。そこに踏み入れてしまえば、いよいよ引き返すのが難しくなる。
駄目だ、ハマったら絶対に駄目だ、となけなしの理性との葛藤が彼の中で行われる。だが、そう長くは続かない。継ぐ者としての責務や抱いた理想像が、与えられる慈愛の温もりによってどんどん頭から薄らいでいく。
思えば、一度でも秘多の誘惑に勝てたことがあっただろうか。罠に掛かっては深みにハマり、足掻けば足掻くほど欲望の渦に呑まれる。
『……いて、此処に』
これではまた同じことの繰り返しだというのに。ここで一緒に堕ちてしまうのも存外悪くないかもと、緑谷はどこかで受け入れようとしていた。
『いいんだよ……。誰かの為に一生懸命なとこも、すぐ救けたがるとこも、デクの君も素敵、大好き……でも、それ以上に私は……——』
反抗する意思はもうないのだと、確信した秘多が更に続ける。だが肝心なとこを言い終える前に傷んだ緑髪に顔を埋めてしまう。互いに見えずとも、その表情は慈しみで満ちていた。
『……私といる限り、何をしてもきっと誰にも知られない。これは出久くんと私だけの秘密』
「僕と……密ちゃん、だけの…?」
小さく頷いた後、近い位置にある少年の顔を見入る。周囲の意に反することだとしても、まだ返したくない。