第12章 疲れ勃ちした出久くんとヤリたい放題のバカンスに沼る話
正直、今から言う提案に不安を感じた。緑谷がどこまで信じてくれたのか、それを確かめる術はない。たが秘多はダメ元の精神で彼に詰め寄ると、小さな声でこう言った。
『要するに、私が言いたいのは……出久くん、安心して休んでいいんだよ?』
「えっ……」
彼の荷を肩代わりしたいなんて考えること自体烏滸がましいのかもしれない。けれど、どうにかして力になってあげたいという気持ちに偽りはなかった。
『君は、ちょっと頑張りすぎなとこあるから。ここなら私たち以外誰もいないし、何しても許される。今だけでいいから……信じてほしい』
どうかお願い……、と縋るような思いで緑谷の手を握り込む。未だにマスクを外していない彼ではあったが、声から困惑の気持ちが少し読み取れた。一度解かれた手は今度は繋いだまま、顔を見合わせる。暫くそうしていると、緑谷はありがとうと前置きをして、静かに答えた。
「密ちゃんの言ったことが全部本当で、そう出来るなら願ったり叶ったりだよ。疑ってる訳じゃないんだけど、君の個性にも必ず何がしかのデメリットがあると思うんだ……」
『そうだね……使用に伴う副作用や負荷は否めない。でも……まぁ、身体の色んなところからちょっと血が出るだけだから、そこまで——』
「血??それかなりマズいんじゃ……?」
言い終える前に、驚愕した緑谷が遮る。能力のサイドエフェクトが、身体中の穴という穴からの出血。開口部は勿論、毛穴からも血が出るなんて聞かされたら、あんぐり口を開かざるを得ないだろう。それでも秘多はなるべく不安を煽らないよう、副作用に於いても包み隠さず話すことにしたのだ。
『といってもすぐには出ないから、今のところ異常ないよ』
「本当に大丈夫なんだよね……?でもどうして今まで内緒にしてたの?」
『隠してた訳じゃないよ?使うことなんてほとんどなかったから、自分でも良く知らなくて……。最初は手が光るだけかと思ったんだけど、初めて君と再会してからもっと知ろうと思うようになって。それで、まぁ……色々試したり、調べまわったりもしてさ』
まさかこんな場所と繋がっていたなんて……、とはにかんで言う秘多に、緑谷の表情はまた複雑に動いた。