第11章 シーツのストックなくなるまで出久くんに泣かされる話
『あ、あ、ああのっ…!出久くん、これには…!』
男体で最も凶悪なパーツを模した、知る人ぞ知るシリコン素材。そんな極悪極太なもの、どこで手に入れたんだっけ……。今となっては遠い思い出のよう。
「このバイブ、初心者用にしてはちょっとデカくない?よりによって何でこのデザインチョイスしたのかも気になるなぁ…」
こんな酷い皮肉があるだろうか。純粋無垢なヒーローが卑猥な品物を片手に、淡々とその単語を口にする。
それもただのバイブではない。誰もが知っている、彼の有名な元プロヒーローのイメージカラーを用いた装着型の愛玩具。何十種類もの振動パターンが備わってる他に、端末での遠隔操作を可能とするのが最大の売りらしいが、無論これは非公式のパロディ製品だ。見た目がごっついのも、おそらくは開発者等の勝手な着想によるものだろう。
そして何故そのような物品を持ってるのか。意外にも理由は単純なものだった。初心な若者なら、気になる異性の私物と同じもの、又は似せたものを手にしたくなるのは珍しいことではない。
そう言った感覚で何となしに衝動買いをしてしまい、後悔した挙げ句に、絶対に見つからないであろうこの場所に持ち込んだのだ。そんな物、記憶ごと倉庫の最奥にしまっておこうと思ったのに、どうして今になって……。
「専用のアプリで操作出来るようになってるんだ、凄いね。自慢じゃないけど、僕オールマイトグッズの新情報は大方持ってるんだ。でも、この手のグッズは見たことないや」
非公式以前に、アダルト向けなのだから当たり前だ。しかしそんなことは然程重要じゃない。素っ裸にされたことより、ロクでもないものを見られた恥ずかしさと、幻滅されるかもしれない不安に、秘多は弱々しく四肢を慄かせていた。
通常のバイブならまだしも、プロヒーローのオマージュ品は流石にないな。絶対に引かれた…、と固唾を呑んでいやいや覚悟を決める。だが、次に彼の口から出た言葉は、その覚悟すら揺るがせるほどのものだった。
「理由はどうあれ、折角だし使ってみようか?」
『へ……?』
耳を疑った秘多が聞き返そうとするも、秘裂に当てがられた硬い感触に遮られる。無機質な冷たさの正体があの色とりどりのバイブであることを脳が認識すると、まるで猫に睨みつけられた鼠のようにただならぬ切迫感が胸奥に淀んだ。