第11章 シーツのストックなくなるまで出久くんに泣かされる話
「考えただけでドキドキするでしょ?」
『んっ……、はぁ…♡』
「否定しないんだ?酷いことされると濡らしちゃうなんて…はしたない密ちゃん♡」
怒ってるとは思えない程の落ち着いた口調が、吐息と一緒になって耳元をくすぐる。その様子は、普段見るほんわかとした雰囲気とはうってかわり、まるで別人のような物腰だった。
冷徹さが伺える彼の眼差しに、穴が空きそうなくらい裸体を凝視される。ただそれだけなのに、異様な興奮を覚えてしまい、いつしか飢えたように呼吸までもが乱れていった。
「でも残念。僕は一切触らないよ?」
『えっ…?』
「嫌ってほど虐めたいところだけど、それだと君の思うツボだから…」
唐突にそう告げられ、物欲しそうに揺らいでいた秘多の瞳がピタリと止まった。そんな自分を他所に、緑谷は即座に一歩下がっては、自身の身形を軽く整え始める。まだ直接的な快感すら与えられていないのに、どうして…?
『そ、そんな…っごめ、本当にごめんなさい、ああいうのもうしない…次からちゃんと言うこと聞くから、出久くんっ…』
「口だけ謝られてもなぁ……やっぱ駄目、まだ許せない」
薄桃色に染まりかけた身体を放置されて、困惑の表情を隠さずにはいられなかった秘多の謝罪を、緑谷がきっぱり拒絶する。やたらとニマニマしているのは、数分前まで優位に立っていた自分が、今は甘美な刺激を欲する淫女さながらの熱情を顔に滲ませて、わなないているからだろうか。
こんな手の凝った拘束をしておいて、結局手を出さないとするなら、そこにどういう意図があるのか。少しでも平然を取り戻そうと考察を試みるが、彼があるモノを取り出した瞬間、又もや感情は掻き乱されてしまう。
「それより、この前倉庫片かたづけてた時に見つけたんだけど、コレ密ちゃんの?」
『っ!?それはっ……!』
「やっぱりそうなんだ。こんなの隠し持ってたなんて…」
僕と言うものがありながら…、と付け加えて言う緑谷の手元を眼にするや否や、喉がガラガラになるくらい叫びたくなるような羞恥と焦慮が、秘多を脳乱させた。何故ならそれはーー。