第10章 安らぎを求めて出久くんとスローライフな性活を送る話
一緒にいる時間が増えれば、増えた分だけ渇きが酷くなるようだ。絡め取られるくすぐったさに身体が震え、緑谷の口元から溢れた白濁を恍惚と舐め取る。
与えられるもの全て受け入れることで彼が悦んでくれるなら、鼻を抜ける性の香りも、流し込まれたものが喉を通る感覚もたまらなく愛おしく感じてしまう。
「ぷは……♡キスより本番が先だなんて、順番めちゃくちゃだね…」
『っ……、うん』
細かく息を乱しながら、少年の単純で無垢な笑みを見詰める。考えなしにその柔そうな髪に手を伸ばすと、驚いたことに彼の手跡が手首にくっきり残っていた。強く触れたい……か、あながち間違ってはいないかな。戻り掛けつつある意識の中、思わずふふっと静かな含み笑いが一つ零れる。
「密ちゃん…?」
『……』
たらりーー
今朝から派手にやったせいで疲れてるのだろうか。真っ直ぐ見ている筈なのに、なんだか視界が不自然に歪んでいるように見える。
「密ちゃん…!」
突然襲いくる怠惰感に瞼が重い。暫く横になってぼんやりしていると緑谷に強く呼びかけられる。一体何をそんな心配そうにーー。
「血がっ……」
『え……』
またたらりとほうれい線を伝う感触にやっと自覚する。鼻腔から流れ出るソレを指で掬い目前まで持ってくると、案の定、柘榴の粒のように赤かった。
『あぁ……』
「まさか個性で負荷が掛かってっ…!」
そっか……。よそさまのことのように呟く自分に対し、緑谷はじっとしていられない程に動揺していた。ここに来てから何日が経過したっけ?正確に覚えていないが、身体に異変が生じているということはかなりの日数が経っているということになる。
それでも秘多は心配を掛けまいと何食わぬ表情を維持し、ゆっくり上半身を起き上がらせた。
『大丈夫、何ともないから』
「でも…!」
『ダメ…』
何度か血を拭って一応止めることが出来ても、彼の不安を完全には取り除けない。