第2章 門限破ってまで救けに来てくれた出久くんと濃密な一夜を過ごす話
…ーー
『ん……!んっ♡…んむ』
食べられているんじゃないかと錯覚する程貪られて、目眩がする。合間に休憩をすることすら許さないと、緑谷の荒々しい行為がそう訴え掛けているようだった。
秘多もまんざらでもなく、必死に彼の唇を啄み濡れた粘膜同士を擦り合わせる。もう一度その雄々しい背中に腕を回したい願望は叶わず、半分ぼんやりとなすがままになっていた。
クチュクチュクチュ♡ジュルチュ♡
『い、いじゅっ……♡んん、んっ!』
「ん、ん♡ふ…♡」
無意識なのか、緑谷の手は秘多の手首が赤く滲む程力強く握っていて、飲んで欲しいと言わんばかりに逃げ出そうとしている舌をねちっこく絡み取った。酸欠に近い状態なのにも関わらず、頑張ってついてこようとする彼女が愛らしく、つい意地悪をしてしまう。
次第に互いの呼吸は乱れ、汗で肌が湿り、内側から獣じみた熱がじわじわ湧き出る。直感的にソレを感じ取ると、緑谷は糸を引きながら口を離した。
「ごめん、………」
それだけ言って口元を拭う彼の表情は、実に雄々しく、我慢の余裕など見られないくらい険しかった。本当にあのウブで純粋な緑谷出久なのかとすら疑ってしまう程に。
曇り掛かった双眸を合わせるだけで、うまく廻らない頭でも悟れる…そこまで自分を欲しているのだと。こんなギラついた緑谷を前にして、秘多は戸惑いで自身の下唇を噛んだ。
「密ちゃんっ……」
ゆっくりと緑谷の身体が覆い被さってきたと思ったら、横でふーふーと何かに耐えるように荒い息を吐いていた。理性は完全に失っていないようで、まず襲うようなことはしてこない。しかし、太腿に押し当てられているどの身体の部分よりも熱いモノが彼のリミッターを示していた。
『いずっ……』
あの勇敢で心優しいヒーローの卵をこんな風にさせてしまったのは自分だと、背徳感で奥が疼いた。
『さ、触りたい…?それとも、触って欲しい?』
「でもっ、周りに人がーー」
『いいよ……』
「っ!!」
熱い視線を感じながら、秘多はよそよそしい手付きでたった一枚しかない上着を脱ぎ去る。無論、胸だけでなくその他の肌が晒け出された。初めて目にする生身の裸体に困惑して、緑谷はなるべく視線が下にいかないように必死に堪えるが、それを恥ずかしがって見ていた彼女は不覚にも吹き出しそうになった。