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緑谷出久と裏の青春をするシリーズ

第10章 安らぎを求めて出久くんとスローライフな性活を送る話


「行かなきゃ…。もう直ぐこっちにも救助が来る。見かけたら安全な所まで案内して貰うんだよ?」
『…っ、出久ーー』

待って、行かないで。そう言いたかったけれど、言葉に出来ず結局緑谷に背を向けられる。苦悶が滲んだ様を晒さまいと、いや、或いは悟られない為にだろうか。

「心配しないで、必ず取り戻すから。そしたら君ともまた…ーー」

少年はもう振り返らなかった。どんなに言葉で引き留めようとしても、飛び去る彼を止めることはきっと出来ない。しきりに吹く風に乗って、グレーのどこかへと進んでいく。まるで、自ら死ににいくような……。その光景は、世の終わりなんかよりもずっと残酷で、心臓が凍り付くような喪失感が耐え難い程に自分を襲った。

『っ……』

ただ傍観することしか出来ないのか?傷ばかりを溜め込んで、自分まで見失うようになってしまったら…。無邪気な笑顔が脳内に過り、彼の名前が繰り返しこだまする。

『出久、くん……』

真っ直ぐ進み続けるヒーローに、痛みを口にしない彼に、まだ何一つ伝えられていない。それが、嫌なんだっ…ーー。

『出久くん!』

声を限りに叫んだと同時に、"回廊"が開いた。

言葉じゃ届かないのなら、何か一つ、自分にしか出来ないことの証明を。突として出現した光の円を回避出来ぬまま、驚愕した緑谷の身体は白い微粒と共にその中へと溶け込んでいく。

「!?」

差し出がましく思われても、最悪敵に回してくれたって構わない。大事な人に降りかかった雨に傘を差せないで、何が味方だっ…。ヤケクソ、もうどうにでもなれと必死な思いで発動させた個性に力を加える。一瞬こっちを振り返った少年の姿が完全に消えていく前に、秘多は精一杯に手を翳し、精一杯にこう言い放ったのだった。

『私を信じて…!』
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