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緑谷出久と裏の青春をするシリーズ

第9章 オリジン組メンバーの眼を盗んで出久くんと濡れた色事に耽る話


『お騒がせしてすみません…眼に異物が入ってしまったらしくて、少し診て貰ったんです』
「そ、そうなんだ…!たんぽぽの綿毛くらい大きな埃が付いてて…でも、もう取れたみたいだから一安心だねっ」

いや、フォロー下手すぎか…。そう内心突っ込みつつ秘多は何気に瞼を擦るフリをした。流石に無理があると諦め掛けるものの、どうやら彼は根からの天然らしく、疑うどころか眼科に行かなくて良いのか?と心配してくれた。緑谷と同様で、純粋に良い人なのが心臓に悪い。そんなナイーブな少年を欺いた罪悪感に少々苛まれながらも、一応お礼の言葉を述べるのであった。

『今無料で食堂やっているので、轟くんも良かったらいらしてください。ここで採れた山菜や蕎麦を使ったものばかりで申し訳ないですが…」
「蕎麦か?貰っとく」
『先に爆豪くんが来ていると思いますよ。お二方もどうぞそちらへ…』
「う、うん…それじゃあね、密ちゃん」

変に怪しまれない為に意図を読んでくれた緑谷がそう言うと、先にその場を後にした轟に続いて歩き出す。そうすると秘多は二人の死角に入るのを見計らい、音を立てない猫のような足取りで駆け寄ると、彼の手をそっと握っては耳元に自身の唇を寄せた。

「……っ!」

突として握られた手の中にあるものを落としながら囁いた言葉に、案の定、呼吸も止まりそうになっている。眼を見開かせた緑谷をよそに、秘多は薄笑いを浮かべてその場を去っていく。“鍵”に隠された真意を汲み取ってくれることをどこかで期待しながら。





…ーー

時計を気にすればする程募ってくる焦燥感に胸が小躍りする。待つ時間が長い分だけ、一緒にいる時間が濃いものになると分かっているから、わざとあんな曖昧なことを少年に吹き込んだのだろう。

『時刻は……22時、よし』

あの後何を思ったのか定かではないが、状況が状況で思うように言葉が出なくて、さぞもどかしかったに違いない。食堂のテーブルから少し離れた位置で手を振れば、彼は分かりやすい程の動揺を見せ、おずおずと小さく手を振ってくれた。その様子はいつ見てもあどけなくて、見ているこっちまで焦れったくなってしまう。でもそんな感情も含めて、今晩は何しよう?どうしてあげようか?と策士なことを考えるのが案外好きだったりするのだ。
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