第2章 門限破ってまで救けに来てくれた出久くんと濃密な一夜を過ごす話
『出久くん、なんか雰囲気変わったね』
「えっ?あっ……ごご、ごめん!こんなこと言われてもきしょいだけだよねっ」
『ふふっ、むしろ心強いよ。私の方こそごめんなさい、取り乱しちゃって』
我に返ったようにワタワタとし始める少年を、秘多は小さく笑ってから身体を離した。
雄英に通い始めて、内面も体格も逞しくなっていた緑谷がどんどん遠い存在になって行くことを薄々画面越しで感じていたが、女慣れしていない所は中学の頃から変わらなくて、内心ほっとしていたのだ。
『シャワーはもう浴びたの?』
「まだだけど?」
『そう、よく見たら出久くんーー』
「えっ…、秘多さん?!」
何か気付いたように、突然秘多が詰め寄ると、シャツの裾を躊躇いなく捲り上げた。脇腹を晒されて困惑してる緑谷を横で聞き流し、深刻そうな表情で彼女は口を噤む。なにせソコには真新しく出来た痣や擦り傷が複数存在していたのだから。
軽傷で済んだものの、怪我を負ってまで助けようとしたのか…?短い沈黙の後に、緑谷を一旦ベッドに座らせると、秘多はあるものを取りに急いで何処かへ行ってしまった。
「……った」
取り残された緑谷は改めて怪我している箇所に触れてみた。血は然程出ていないものの、ズキズキと疼痛が走る。気にしていなければ耐得られる程度だが、彼女をまた不安にさせてしまったことが何より不甲斐なくて彼は深く溜め息を吐いた。
『出久くん』
「はいいっ!?」
突然の呼びかけに緑谷は肩を引き攣らせる。ビクビクした所も相変わらずと言うように軽く笑う秘多は手元にあった物を横に置いた。
『タオルとぬるま湯持ってきたから、応急処置はしておこう。シャツ脱いで』
「あ、ありがとう。そうだね、一応処置はした方が……ん??」
え“っ……脱ぐ?
耳を疑った緑谷が一瞬で硬直する。
『服着たままだとやり難いから脱いでね。軽く拭き取ることくらいしか出来ないけど…』
「いいいいいよっ、ぼ、僕一人で出来るから!」
『そう言わずに、背中だと届かないでしょ?』
「ほ、本当にっ…!僕まだ身体洗ってないし、き、きっと汗臭いよ」
ギュっ
目で追えないくらい高速で両手を振っている緑谷を静止するように、秘多がその手を掴み取ると隣に腰掛けた。
『これくらいはさせて…ね?』
……ハイ。