第8章 誕生日にアメコミ小ネタかました出久くんとサンデー作りする話
何もしなくてもメインの材料自体蠢いている為、きっとプロの人にとっても難易度高めだろう。いや、そもそも目の前にいるコレは食べ物じゃない以前に生身の人間なので、普通のお菓子作りと掛け合わせるのは可笑しいか…。
「っぁ……うっ…」
些かにヒクつく腹部や胸の輪郭に沿うようにクリームを塗り、ベースがやっと一段落つくと、後は自由気ままにフルーツやトッピングを乗せていくだけ。一世一代の誕生日プレゼントなのだからなるべくやり過ぎないように、それでいて楽しくカラフルに…。
『うん、出来たよ』
終いにはシロップで署名のように名前を書き上げる。思っていたより出来ばえが良かったのか、秘多は自信作を見下ろしながら満足気に微笑んだ。
「た、楽しそうだね……」
逆に緑谷はサイコパスでも見るような眼で見詰め返し、火照った全身を小刻みに震わせていた。
何せ男らしい上半身には似つかわしくない色とりどりの食材等が所々乗せられており、極め付けには「Happy Birthday」と言うメッセージと所有感を際立たせる自分の名前が大きく描かれていたのだ。フラットに表すなら、デザート版の男体盛り。まさか今日という日に自分がケーキにされるだなんて思っても見なかったのだろう。
『これは中々……、でも最後にもう一工夫ね』
「まだあるの??」
キッチンの棚から取り出した物を秘多が何気に見せびらかす。手元にあったそれは何の変哲もない、赤くて細長い布のようなものだった。ソレを眼にするや否や、すぐさま嫌な予感を察知した彼はあたふたと身じろぐものの、呆気なく手首を掴まれては拘束されてしまう。
力あるヒーローを取り抑えるのにこんな布切れでは何の拘束にもならないと思うが、一応意図だけ伝わる筈だ。
『とても似合ってるよ…ふふっ』
「っ…もうふざけてるでしょ?」
『そんなことない、写真に収めたいくらい傑作だよ』
「それは、辞めてほしいな……」
両手首にリボンを結んだことでよりプレゼントらしくなったは良いとして、羞恥に耐えながらいじらしく身構えてる緑谷を見ていると、なんだかとてもイケないことをしているようで結構くる…。秘多の喉がゴクリと鳴り、衝動に駆られるまま自分もテーブルの上に乗ると彼の膝を跨いだ。
『出久くん震えてるね、もしかして恥ずかしくなった?』
「い、いや……そのっ…」