第8章 誕生日にアメコミ小ネタかました出久くんとサンデー作りする話
良からぬことがこれから始まるんだと悟り、緊張で引き締まった緑谷の赤面に濃い赤みが加わる。それを更に煽るように、秘多は妖艶な笑みを浮かべながら鎖骨に付いたクリームを指で掬い取ると見せ付ける形でチュルっと舐め取った。
『それとも、早く食べられたくて待ち遠しいの?』
「っ…!!」
図星を突かれた反応が面白くてつい吹き出しそうになる。だんまりしている少年の赤く染まった耳殻に自分の口を寄せ囁いた。
『ねぇ、出久くん』
「…な、何?」
『“食べてください”って言ってみて』
「んなっーー」
今日は何でも聞いてくれるよね?秘多がそう潔く遮る。承諾したからには最後までやり遂げてもらう、なので口答えは許さないと目付きでも訴え付けた。最初は戸惑った素振りを見せるものの、自分と違って聞き分けが良い緑谷は勇気を振り絞るように声を振るわせた。
「た、食べて…くだ、さい……」
両手が塞がれている為、顔を隠したくても隠せず、彼は恥辱で若干泣きそうになる表情を露わにする。なんて非現実的だ、こんな状況余程のことがない限り有り得ないのに…。
急激に昂った感情が渦巻くのを感じた秘多は、せめて頑張って言えた褒美にと、下着意外の衣服を忙しく脱ぎ捨てる。柔肌を晒した姿の自分を見て逆に安心したのか、緑谷はいいよとでも言いたげな表情をしてからコクンっと頷いてみせた。
『じゃあ、遠慮なく……んむ♡』
頂きますと脳内で唱え、デコレーションが崩れないように気を付けながら緑谷の肌に唇を這わせた。顔を近付けたことによって彼自身の匂いとスイーツの甘い香りが鼻いっぱいに広がり、唾液腺を刺激される。時間が経つに連れて少し溶けてしまったシロップの文字を、それでも美味しそうに秘多は躊躇いなく舐め始めた。
「っ、んっ…♡くすぐたっ…」
甘い、温かい…。アイスを舐めるみたいに舌を滑らせ、溢れ落ちそうになるものを丁寧に吸い取る秘多の動作は艶めかしいというよりはたおやかだった。シロップの甘味と素肌の感触、決して相容れないと思っていた筈が不思議と美味に感んじられ陶酔に浸りそうになる。
『んちゅっ…出久くん、美味しいね…♡』
リップ音を立てつつ、徐々にメッセージは綺麗さっぱり舐め取られるが、今の緑谷は自分だけのものだということを知らしめたい故に、敢えて名前だけ残しておく。