第1章 始まりは最悪な形で
「ねぇリッちゃん。これなんて書いてあるの?」
『さぁてね。内緒。』
「なんだよそれ。勿体ぶるなぁ。」
『分かったらタケミチびっくりするかもね。』
いたずらっ子のようなでも、どこか寂しそうな笑みを浮かべ、指輪を受け取るとリツカは小指にはめると天にかざす。
12年の月日が経ちとっくに薬指にはめられなくなった指輪....
彼に初めて貰ったプレゼントの指輪。
何度も捨ててしまおうと思って捨てられなかった指輪。
つけるだけで少し寂しい気持ちになるのは私が未だに後悔してる証拠なのかな?
懐かしそうに指輪を見つめるリツカを見て、タケミチは顔を歪めるとどこか悔しそうに俯いた。
「.....」
『タケミチ?』
「なぁリッちゃん.....俺たちどこで間違えたんだろう。」
タケミチの悲しそうな問いにリツカは不意に目をそらす。
どうしてこうなったのだろう。
何度そう考えても答えなんて帰ってくるわけが無い。
思い返せば、私の人生逃げてばかりだった...
業を背負わせようとする親から逃げて、
自分自身の気持ちからも逃げて、
歪な私を受け入れてくれた彼らからも逃げて、
逃げて、逃げて、逃げて...大切な人も裏切って...
挙句の果てには大切な妹までも目の前で失って、誰も救えなくて....
孤独で、寂しくて、辛い
最悪な人生だった。
どこで間違えたかなんて分からない程もうずっと選択を間違えながら生きてきた。
だからこそ、リツカはタケミチの問に答えることができなかったのだ。
『....それは。』
苦し紛れに呟いた瞬間。