第1章 始まりは最悪な形で
───隣にいたはずのタケミチの姿が消えた。
「え?」
間の抜けた声が聞こえ、まるで突き飛ばされたかのようにタケミチの身体は駅のホームから線路へと躍り出る。
『タケミチ!!』
悲鳴にも似た叫び声をあげると、咄嗟にタケミチの手を掴む。
しかし、所詮男と女....
女が成人男性の体重を支えられる訳もなく、グンッ!!とタケミチに引っ張られるようにリツカも線路に躍り出てしまったのだ。
「やばい!!落ちたぞ!!」
「おい!何やってんだ!!」
「誰か!!」
「きゃあぁぁぁーーー!!!」
一部始終を見ていた人の輪から悲鳴と怒号が上がる。
ファーーン
電車の音が聞こえ、線路に落ちたリツカ達に刻一刻と電車が迫る。
目を指すほどの光に顔を照らされた瞬間
死を悟った。
『嘘っ....』
ああ、もうダメだ。
ここで死ぬんだ。
そう思った時
無意識のうちに指輪を強く握る。
────パキンっ!
リツカの頭の中で何かが割れる音が木霊して、意識が暗転した。
意識が途切れる瞬間最後に思い出したのは、何故か親でも最愛の妹でもなく、こちらを振り返り笑いかける愛おしい彼の姿だった。
『マイキー........』